わが国産業界はかねてよりリサイクルの推進、廃棄物の排出抑制に取組んできた。日本経団連では、1990年より主要14業界(後に15業界に拡大)の協力を得て、「主要業界における廃棄物対策への取組み状況」を毎年調査、公表し、産業界の自主的取組みの一層の推進を図ってきた。
さらにそうした取組みを強化・充実すべく、1997年に経団連環境自主行動計画を策定するにあたって、あわせて廃棄物対策に関する自主行動計画を作成することとした。自主行動計画の廃棄物対策分野には35業種が参加し、それぞれの業界毎にリサイクル率、最終処分量などの数値目標ならびにその達成のための対策を明らかにするとともに、業界毎の取組みの推進状況を毎年定期的にフォローアップすることで、継続的かつより一層積極的に廃棄物対策に取組んでいくこととした。かかる方針の下に、1998年には自主行動計画の第1回フォローアップを行ない、業種毎の対策の進捗状況を取りまとめて公表した。
1999年に入り、最終処分場のひっ迫やダイオキシン問題等を契機とする国民の廃棄物問題への意識が高まる中、産業界として循環型社会の推進に向けて取組みを一層強化することとした。そこで、第2回フォローアップ(1999年4月に各業種へ要請)の実施にあたり、産業界の自主的取組みの成果を社会にわかりやすく提示するために、各業種毎に産業廃棄物最終処分量の削減目標を設定するよう要請するとともに、産業界全体の削減目標を設定することを決定した。その結果を、下記の通り、各業種毎の取組み、産業界全体の実績と併せて1999年12月に公表した。
今回のフォローアップには41業種が参加し、そのうち産業廃棄物最終処分量削減目標の達成状況フォローアップには32業種(注1)が参加した(個別業種毎のページ <PDF>を参照)。32業種からの産業廃棄物最終処分量は、基準年である1990年度でみると、わが国全体の産業廃棄物最終処分量の70%近くをカバーしている(注2)。
2001年度の産業廃棄物最終処分量実績は1920万トンとなり、2000年度実績の約4%減となった。この結果、1990年度(基準年)実績の6193万トンに比し約70%減少していることが明らかになった。
これにより、産業界の産業廃棄物最終処分量削減に向けた自主的取組みが2001年度においても進展し、1999年度に設定した産業界全体の産業廃棄物最終処分量の2005年度における削減目標を約9%上回ったことが明らかになった(注3)。
この要因については、各業界における自主的な取組みを行った成果であるため、最終処分量の削減ならびに抑制に寄与した要因について、業種毎に記している。廃棄物対策にあっては、業種・業態毎に排出される廃棄物の種類が異なるうえ、処理方法・技術も多様化していることが理由である。また、産業界全体の産業廃棄物最終処分量削減目標を設定した際にも、自らの業を最もよく知る各業種自身において、機動的かつ柔軟な廃棄物対策を行うことが効率性が高いと判断し、最終処分量のみを統一指標とした経緯もある。
事業系一般廃棄物対策や使用済み製品対策についても、該当する業種毎に記している。今回のフォローアップに参加した41業種のなかで、とくに事業系一般廃棄物対策を中心に取り組んでいる業種の場合、そうした具体的な取組みを公表している。事業系一般廃棄物対策や使用済み製品対策等については、統一的な目標は定めていないが、循環型社会の推進に向けた産業界の自主的取組みとして重要な役割を担っている。
循環型社会形成推進基本法や改正廃棄物処理法、資源有効利用促進法などの廃棄物・リサイクル関連法の施行に伴い、こうした新たな制度的枠組みを遵守するために取組んでいる新たな対策についても公表している。あわせて、資源循環をさらに促進させる観点からの政府・地方公共団体への要望についても調査項目とし、その結果を業種毎に記述している。廃棄物関連法施行に伴なう新たな対策や政府への要望が多く寄せられたことが今回の特徴の一つである。
また、今回から、(1)廃棄物最終処分量削減、3R促進に貢献している具体的技術、(2)業種毎のカバー率について、記述している。
- (注1)
- 産業界全体の産業廃棄物最終処分量を算出するにあたり対象となった業種: 電力、ガス、石油、鉄鋼、化学、セメント、製紙、自動車部品、電機・電子、自動車、建設、非鉄金属製造、板硝子、ゴム、電線、アルミ、製薬、ビール、伸銅、石炭、精糖、産業機械、造船、鉄道車輌、航空、牛乳・乳製品、製粉、ベアリング、清涼飲料、通信、産業車両、自動車車体の32業種。このうち、航空、通信、産業車両、自動車車体については、今年度から集計。
- (注2)
- 32業種の1990年度実績値6193万トンは、同年度のわが国全体の産業廃棄物最終処分量8900万トン(環境省調べ)の69.6%。なお、日本経団連の数値には、わが国全体の産業廃棄物排出量の約21%を占める上下水道業からの産業廃棄物(主として汚泥)、約23%を占める農業部門からの産業廃棄物(動物のふん尿等)は含まれていない。
- (注3)
- 住宅、工作機械、貿易、百貨店、損害保険、不動産、鉄道、海運、銀行の9業種は、最終処分量集計に参加していない。ただし、住宅については、建設と重複するため、建設の数値の内数としている。
循環型社会形成推進基本法、改正廃棄物処理法、資源有効利用促進法(改正リサイクル法)の施行等にみられるように、循環型社会の推進はますます重要な課題となっている。循環型社会は、エネルギーを含む資源の投入量の可能な限りの抑制、資源の再利用促進による環境負荷の低減、適正処理の推進が全体として図られるべく、不断の努力が重ねられる社会と考える。その意味で、廃棄物対策の基本は、3R(リデュース、リユース、リサイクル)、とりわけリサイクルを積極的に進め、できるだけ最終処分場に回らないようにすることである。産業界は自主的取組みを中心に据えて、最終処分量の削減のみならず、排出量の抑制、リサイクル・リユースの促進、使用済み製品対策についても積極的に取り組んできたが、今後も、従来以上に取組みを強化し、創意工夫を活かした自主行動計画の着実な実行により、引き続き産業界全体としての統一目標の達成に努力していく。循環型社会の推進にあたっては、こうした自主的取組みが最大限尊重されることが重要である。
循環型社会を推進する上で、技術開発の推進、普及は不可欠の課題であり、総合科学技術会議においても、環境技術を重点分野とし、廃棄物処理・リサイクルに係る先進的な技術開発を進めることとされており、中長期的観点から強力に推進していく必要がある。
各産業における3Rの取り組みが進展しているなか、本年度は折しも中央環境審議会において廃棄物処理法の改正が議論されたこともあり、廃棄物処理法に対する関心は高かった。産業界の強い関心を受けて、経団連は昨年7月に意見書「循環型社会の着実な進展に向けて」をとりまとめ公表した。意見書では、(1)国民の廃棄物への理解を深める観点から不法投棄を厳しく罰すべきこと、(2)廃棄物を再生資源として活用していく観点からリサイクルは規制を緩和して推進する必要があることを指摘し、廃棄物処理法の抜本改革を提言した。
本調査においても、「有価物は廃棄物処理法の対象とすべきではない」、「不法投棄対策とリサイクル推進は分けて考えるべきである」、「施設の設置許可の提出書類において画一的に新役員の住民票などを提出させるのは事務の合理化に反する」など、3Rに取り組む現場からの真摯な声が寄せられた。行政における早急な改善を強く要望したい。
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廃棄物対策自主行動計画 ─ 個別業種版 ─ (PDF, 103p, 371k)
環境自主行動計画のコーナー
日本経団連意見書「循環型社会の着実な進展に向けて」
(2002年7月16日公表)
「循環型社会の着実な進展に向けて」のポイント
(2002年7月18日公表)
「廃棄物の定義と改革の方向」 <PDF>
(「循環型社会の着実な進展に向けて」附属資料)
(2002年7月16日公表)
『「今後の廃棄物・リサイクル制度の在り方について」のポイント(解説)』 <PDF>
(2002年12月18日公表)