[経団連] [意見書]

地球環境問題へのわが国の対応と
環境自主行動計画の一層の透明性確保に向けた取組み

2001年9月6日
経団連 環境安全委員会
 共同委員長山本 一元
 地球環境部会長 桝本 晃章

 経団連では、これまで6月15日に「温暖化問題へ冷静で粘り強い交渉を求める」を、8月8日には「実効ある温暖化対策の申し入れ」を発表し、温暖化問題へのわが国の対応のあり方について提言してきた。一方で、先般終了したCOP6の再開会合ではシンクや京都メカニズムについて政策の大枠が合意され、10月下旬開催のCOP7を経て、京都議定書の批准や国内対策の問題が大きな議論になることが予想される。そこで、温暖化問題へのわが国としての対応について、あらためて産業界の考え方を以下の通り明らかにすることにした。

1.国際的枠組みへの米国の参加は不可欠

 地球温暖化防止には国際的枠組みの下、世界各国が一致協力して、温室効果ガスの持続的削減に取り組む努力が不可欠である。京都議定書批准に否定的な米国をとらえて、米国抜きの議定書発効をめざす動きがあるが、先進国のCO2排出量の39%を占める米国が参加しない国際的枠組みは、温暖化防止に実効性を持ち得ないうえ、国際競争に歪みを生じることになる。温暖化防止には共通の枠組みの下、世界各国が一致協力して、温暖化ガスの持続的削減に取り組む努力が不可欠であり、米国をはじめ、EU(24%)、ロシア(11%)、日本(9%)(括弧内はIEA統計、1997年)の協力体制が構築されるのが先決である。その上で、第二ステップとして、2010年にはCO2の排出量が先進国に匹敵するといわれる中国、インドなどの発展途上国の参加を求める必要がある。
 現在、日米ハイレベル協議が行なわれており、10月にはブッシュ大統領の訪日も予定されている。この機会をとらえて、日米政府が真摯な話し合いを行い、米国が参加できる国際的枠組みの構築に向け全力を傾注されたい。

2.実効ある温暖化対策の必要性

 エネルギー転換部門と産業部門のCO2排出量は1990年度以降ほぼ横ばいであるにも関わらず、民生・運輸部門のCO2排出量は大幅に増加し、1999年度実績で見ると日本全体の46.4%を占めるに至っている。
 エネルギー転換と産業の多くの部門が経団連環境自主行動計画によってカバーされ、排出量の総量が自主的にコントロールされているのに対し、民生、運輸では交通対策など現在まで対策の実効があがっていない。
 産業界としても、自動車や家電製品のトップランナー基準の達成等に成果をあげており今後とも引続き努力するが、政府は民生、運輸の対策の多くが国民生活に直結する性格のものであることを認識し、我が国の目標達成の厳しさと国民が果たす役割の重要性について教育・啓蒙に努めるとともに、交通渋滞解消のためのインフラ整備など、CO2削減に効果のある対策を策定すべきである。

3.中長期の革新的技術開発の促進

 温暖化対策は長期的には技術開発が鍵となることから、産業界としては技術開発によって引続き貢献していく考えである。しかしながら、石油危機以降、すでに20%以上の省エネを達成し、諸外国に比して非常に高い省エネを達成したわが国の産業界が、一層のCO2削減を実現するためには、原子力をはじめ既存の技術の活用を図るとともに地球温暖化防止技術を国家の技術開発戦略の柱の一つとして位置付け、民間の技術開発を促すよう政府が中長期的な支援を行なっていくことが求められる。

4.環境自主行動計画の一層の透明性確保

 経団連環境自主行動計画は、毎年参加業種の拡大や一層の情報開示に努め、政府の審議会のレビューなどを受けるなどして信頼性の確保に努めている。今後も、一層の信頼性を確保しつつ中長期に自主行動計画の枠組みの中で産業界の取組みを続けるために、民間による第三者認証を視野に入れたスキームとして、国内登録機関の設置を検討することにした。登録機関の詳細は今後の検討で具体化されるが、基本的には環境自主行動計画参加企業・業界が自主目標、排出実績を登録する。また、CDMやJI活動等で得られたクレジットについても登録可能とする。登録機関は民間機関として経団連が主体となって設置する。

5.経済への悪影響を考慮すべき

 7月の完全失業率が5%に達し、当面、雇用情勢は厳しい情勢が続くとの判断から、雇用対策が内閣の最重要課題として掲げられている。今後、環境税の導入などさらなる対策を産業界に求めるとすれば、環境コストの上昇により国際競争力が失われ、国内の雇用が減少し、さらには国際経済においても大きな歪みが生じることを懸念せざるを得ない。このような状況に十分配慮し、温暖化対策が、雇用にさらなる悪影響を及ぼすことのないよう慎重に議論を進める必要がある。

以 上

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