道路法では、道路網の整備を図ることにより、交通の発達に寄与することが目的とされており、通信事業者が道路に電柱・管路等の工作物等を設け、継続して道路を使用するには、道路管理者から占用許可を得なければならない。道路占用に伴う路上工事については、詳細な工事実施の方法、工事の時期、道路の復旧方法等に関する基準が定められている。当該許可を受けるためには、原則、道路管理者や公益事業者で構成される「道路工事調整会議」での調整を経なければならならず、交通量の多い道路では、舗装工事完了後、原則として一定期間の掘り返し(3~5年)が抑制されている。また、所轄警察から、道路使用許可を得る必要がある。さらに、通信事業者が、他の公益事業者が道路法の占用許可を受けている電柱・管路を利用して回線を敷設する場合、予め公益事業者から利用許諾を得た上で、道路占用許可を取得する必要があり(二次占用許可)、管路等を所有する事業者も占用目的変更許可を得なければならない場合がある。なお、道路法では、一種事業者等の公益事業者の道路占用に関して、一定の基準に適合する場合には占用許可が与えられるが、ケーブルテレビ事業者は対象とされていない。
公園緑地では、公園施設以外の工作物を設ける場合、公園管理者から占用許可を得る必要があるが、公衆の公園利用に著しい支障を及ぼさず、かつ必要やむを得ない場合でなければ、電柱、電線、変圧器などは設置できない。
河川では、河川区域内の土地を占用する場合、河川管理者から占用許可を得なければならない。
いずれの公共空間でも、占用許可を取得して電柱・回線等を敷設すると、敷設場所等に応じて、各管理者に占用料を支払わなければならない。二次占用の場合でも、占用料を支払わなければならない場合がある。
通信事業者が公共空間を利用して回線を敷設する場合、当該空間に数多くの規制等が存在する。例えば、道路を掘削して回線を敷設する際、工事掘削禁止の区域や期間が設定されていたり、昼間の工事が禁止されているため、結果として多大なコストと時間を要している。また、事業者が公益事業者の所有する管路へ回線を収容する際、管路所有者は占用変更許可をとらなければならないため、事業者は占用変更許可が認められるのを待たなければ、回線敷設できない。利用者へ最短ルートで回線を敷設しようにも、途中に公園があると、公園緑地では電線や変圧器などの工作物の設置は原則認められていないことから、事業者は代替用地の確保など、別ルートでの回線敷設を行なわなければならない。
このように、事業者の円滑かつ低コストでのネットワーク構築が妨げられている。事業者の円滑で低廉な線路敷設が可能となるよう、下記のような回線を敷設する場所毎に存在する法的規制の緩和等を図り、公共空間の円滑な利用を促進する制度を整備すべきである。
道路は、交通のためのインフラにとどまらず、高度情報通信社会を支えるインフラとして重要である。電柱や管路などの工作物の設置による道路使用は、道路の目的外使用として捉えられ、占用許可などが必要とされるが、今後、公共性のある事業者や高度情報通信社会を推進する役割が期待される事業者などに対しては、公共空間の1つとしての有効な利用を可能とすべきである。広帯域のネットワークとして期待の高いケーブルテレビ事業者も含めて、上記規制の緩和や占用料の低廉化等を図り、公共空間を有効に活用できるようになれば、事業者は低コストでの迅速な回線敷設とともに、利用者ニーズへの機動的な対応が可能となる。
(1)情報BOXや共同溝等は主要幹線道路での構築が中心である、(2)情報BOXは旧建設省が道路管理の高度化を図るための光ファイバの収容空間として整備されている、(3)共同溝への入溝に際して、ケーブルテレビ事業者は対象外とされている、(4)共同溝構築後の入溝は事実上不可能等の理由から、通信事業者は、情報BOXや共同溝等の公共空間を十分に活用できない状況にある。
事業者が管路等を全て自前で敷設することは、コスト面などからも非常に困難である。国・地方自治体が中心となり、情報BOX、共同溝等をより一層整備し、ケーブルテレビを含めた事業者が情報BOXや共同溝等を有効に活用できるような制度とすれば、低コストでの高度情報通信ネットワーク構築の進展が期待できる。
公共空間に埋設済みの設備の情報は、入手するのが困難な場合がある。
セキュリティ等の問題に十分に留意しつつも、公共空間に埋設されている設備について、必要最低限の情報を入手できるデータベースを整備すれば、円滑な線路敷設に資することとなる。
道路関係の許認可基準等は法令のみならず、通達や方針等も多く、多岐にわたっている。そのため、特に新規事業者は、道路掘削等に関して、どのような法律・基準・条件等があるのか、どのような申請をどの省庁や自治体に行なわなければならないのかという情報を把握することに多くの時間とコストを費やさざるをえないのが実情である。許認可基準などが法令に明記されず、各道路管理者への通達等の周知徹底が不十分であることから、道路管理者により占用手続きの取扱いなどが異なる場合があり、事業者の事務手続の煩雑化を招く一因となっている。
道路占用規制等の緩和と併せて、通達等の道路管理者への周知徹底、法律や占用申請手続などを一覧できるマニュアルの整備により、道路管理者の占用手続などの取扱いの差異を極小とすることが可能となるとともに、事業者にとっても煩雑な事務負担や情報収集作業を軽減できる。