経団連タイムス No.3056 (2011年9月22日)

ポスト京都議定書の新たな国際枠組の構築に向け提言

−国際枠組に対する産業界の考え方などを提示


ポスト京都の新たな国際枠組については、11月末から12月初旬に南アフリカ・ダーバンで開催される気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)に向けた交渉が進められている。京都議定書の約束期間(2008〜2012年)が来年末で終了するため、COP17では、2013年以降の温暖化対策が停滞するという意味での「空白」をいかに回避するかが大きな争点となる。

また、各国が国連に提出済みの目標・行動をCOP17で正式登録しよう、という動きが出てきたとき、「2020年の温室効果ガス90年比25%削減」というわが国の中期目標について、少なくとも見直しの可能性があることを明確化する必要がある。

このため、経団連は15日、提言「ポスト京都議案書の新たな国際枠組の構築に向けて」を取りまとめ、公表した。概要は次のとおり。

■ 合意すべき国際枠組のあり方

京都議定書で削減義務を負う国は、日欧など世界全体の排出量の27%にすぎず、2050年には2割を下回る見込みである。議定書の「単純延長」がなされれば、削減義務を負う国が固定化し、すべての主要排出国が参加するモメンタムが低下するため、地球温暖化防止に逆行する。

「2050年世界半減」目標の実現を目指し、すべての先進国と新興国・途上国を含む、あらゆる主要排出国が参加する、単一で公平な国際枠組を構築する必要がある。

この点、各国が取り組む削減目標・行動を国際的に約束し、その達成度合いを国際社会が評価・検証する「プレッジ・アンド・レビュー」こそが、現実的かつ有効なアプローチである。プレッジ・アンド・レビューを目指すコペンハーゲン合意(COP16で正式決定)には、世界の排出量の8割以上をカバーする国が参加しており、同合意を具体化することで、行動の空白を回避できる。

■ 地球規模の低炭素社会実現策

(1)技術の重視

環境と経済を両立させ、2050年世界半減のカギを握るのは技術である。既存の低炭素型の技術、製品・サービスの普及とあわせて、温室効果ガス大幅削減を可能とする革新的技術の開発・実用化が不可欠である。日本はじめ先進国は、利用可能な最先端の技術の不断の改善とともに、最大限の普及に取り組む必要がある。
また、途上国における削減ポテンシャルの顕在化に向けて官民が協力すべきである。その際、トップランナー方式など日本独自の省エネ制度の展開も有効である。

(2)資金・技術協力

二国間オフセットメカニズムは、途上国のニーズを勘案し、省エネ・低炭素化プロジェクトを通じた技術移転で実現した排出削減の一部をわが国の貢献分として評価する仕組みであり、国連クリーン開発メカニズムを補完するうえで有効である。
他方、多国間資金支援については、受取国の環境改善効果を客観的に評価し、投融資が促される仕組みとする必要がある。

(3)キャパシティー・ビルディングの促進ほか

以上の技術面・資金面での協力を実効あるものとするためには、途上国における気候変動対策の促進に向けた政策・制度の改善、人材育成・能力開発など、キャパシティー・ビルディングが極めて重要である。経団連としても、産業界が有する技術・ノウハウ・人材などを活用し、途上国の取り組みを支援していく。
また、アフリカの電化やエネルギー・アクセス改善、インフラ整備などを官民で支援していく。
あわせて、日本が発案した低炭素技術のデータベース化を通じて、ビジネスベースの技術移転を促進するとともに、電力・鉄鋼・セメントなどを中心に、セクター別の省エネ協力を主導していく。

■ わが国の中期目標

東日本大震災を踏まえ、わが国エネルギー政策の抜本的な見直しにあわせて、温室効果ガス削減に関する中期目標も見直すべきである。

【環境本部】
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