日本経団連(米倉弘昌会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で、全会員を対象に「ピーク電力削減策に関する説明会」を開催した。東日本大震災の影響により、東北・東京両電力管内では今年の夏、厳しい電力供給不足が想定される。こうしたなか、大規模停電や計画停電を回避するために、ピーク電力の具体的な削減策や取り組み事例、ベスト・プラクティスなどを幅広く共有することで、産業界の「電力対策自主行動計画」の立案・実行の円滑化を図る必要がある。説明会では、先行的な取り組みを進める業界団体や有識者から、ピーク電力削減のための具体的な方策や効果などを聞いた。参加者は約950名。
電力中央研究所上席研究員の杉山大志氏は、日本経済にとって、節電を積み重ねることで停電を可能な限り回避し、工場やオフィスの生産活動水準を維持することが極めて重要と指摘。緊急節電は通常の省エネとは異なる性質の取り組みであるため、具体的で分かりやすい、業界ごとの「緊急節電マニュアル」を作成することを提案した。
また、ピーク需要抑制の観点からは、平日と休日の需要差に着目した休日シフトの実施や、ピーク需要の3分の2を占める小口需要の節電戦略が重要であると指摘。早い段階から節電や休日シフトの対策の取り組みを開始し、その効果を検証して需要予測に取り込んでいくべきとの考えを示した。
日本ビルヂング協会連合会常務理事の岡本圭司氏は、設備機器の省エネ化や高効率化などの一般的な省エネ手法のみでは、今夏の緊急事態を乗り切れないと指摘。需要抑制策については、ビル事業者(オーナー)のみならず、テナントへの削減義務が課されるスキームの導入や企業単位での取り組みが求められると強調した。
緊急自主行動計画については、テナント企業での輪番休業や営業時間短縮・シフト等の実施を前提に、大口契約(500kW以上)のビルではピーク電力の25%以上、小口契約では20%以上の削減を目指すとの考えを示した。テナントに対してもクールビズのさらなる軽装化やこまめな消灯など、ビルごとに適切な方法を要請すると述べた。
日本自動車工業会の沼田泰氏は、平日と休日の需要ギャップを輪番休日により平準化し、稼働時間を短縮せずに平日のピーク需要を抑制することが可能となると説明。ピーク電力ができるだけ均等な7つのグループに分け、輪番で休日を取得した場合、15%強のピーク抑制効果が見込まれること、また、夏期休暇を7月末から8月末までの1カ月で4つのグループに分け、分散取得することでさらに3%強の抑制が達成できるとの試算結果を示した。
そのうえで、自動車工業会のピーク電力需要は大口需要家の4%にすぎないと指摘。多くの業界と連携しつつ、輪番休日、夏期休暇のシフトを実現させ、電力需要の抑制と産業活動の両立を実現したいとの意向を示した。