約250人が参加したセミナー |
日本経団連の自然保護協議会(大久保尚武会長)は、自然保護基金と共催で9月14日、東京・大手町の経団連会館において、主として企業担当者を対象とする「生物多様性入門セミナー」を開催した。当日は約250人が参加した。
セミナーではまず、メイン講師の名古屋市立大学の香坂玲准教授から、「いのちのつながり よくわかる生物多様性」と題する講演があった。香坂准教授は、(1)日常生活や企業活動において、水や食料、木材などの供給はもちろん、花粉媒介や災害の防止、美しい景観など、私たちの日常生活や企業活動は、生物多様性によりもたらされる「生態系サービス」の恩恵を受けて成り立っていること(2)輸入等を通じて、海外の生態系サービスの恩恵も受けていること(3)生態系サービスを支える生物多様性は脅かされていること――などを、実例を挙げて解説した。また、生物多様性条約に関して、来年名古屋で開催される第10回締約国会議(COP10)においては、(1)新たな目標設定(2)遺伝資源の利用と利益配分(3)気候変動問題との連携強化(4)保護地域の拡充――について議論されることが予想され、(1)については、民間企業の参画を促す施策や、生態系サービスの経済的評価、それを前提とした新たな資金メカニズムなども議論される予定であり、産業界も関心を持って発言していく必要性があることを指摘した。
続いて、国際自然保護連合(IUCN)日本プロジェクトオフィスの古田尚也シニアプロジェクトオフィサーから、IUCNの生物多様性への取り組みについて、特に企業と協働したプロジェクトについて説明があった後、「日本経団連生物多様性宣言」を含む、生物多様性に関して提案されているさまざまなツールが紹介された。
また、同協議会の石原博企画部会長から、「日本経団連生物多様性宣言 行動指針とその手引き」について解説があり、最近、生物多様性への企業の関心の高まりと同時に、悩んでいる企業も多いように見受けられるが、生物多様性に配慮した企業活動に向けて、悩んだときには、この手引きを参考にしていってほしいとの説明があった。
最後に、持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)のミケル・カレソー氏から、WBCSDが中心となって開発した、「企業のための生態系サービス評価」(ESR)の手法について説明があった。また、同氏は、今後の取り組みとして、生態系サービスの評価手法を開発していることや、COP10の会期中に、IUCNと日本経団連が協働し、「ビジネスと生物多様性の日」というイベントを開催する方向で準備を始めていることなどを紹介した。
会場では、自然保護活動を実施している企業やNGO約30団体によるパネル展示も行われた。