経団連は、1991年の「経団連地球環境憲章」、2003年の「活力と魅力溢れる日本を目指して」で示した「環境立国」の理念等に基づいて、人類の豊かな未来のために地球環境問題に積極的に取り組んでいる。
自然保護の分野においては、経済活動と自然環境の共栄を目指して、1992年に「経団連自然保護基金および同運営協議会(当時)」を設立し、自然保護活動の啓発・普及と、アジア太平洋地域を中心とするNGOの自然保護プロジェクト支援を開始し、基金設立以来、支援総数は約800件に達している。また、2003年には「経団連自然保護宣言」(以下「自然保護宣言」という)を発表して、一層の啓発および活動の推進を図ってきた。
1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において、「気候変動枠組条約」とともに、「生物多様性条約」が採択された。しかしながら、生物多様性については、計測したり実感したりすることが難しいため、その重要性に対する認識はいまだ十分とは言えない。
人類は生物多様性から計り知れない自然の恵みを受けており、生物多様性が損なわれれば、将来の生活文化をはじめ、水や食料、貧困などの諸問題に多大な影響をもたらす恐れがある。社会経済活動が生物多様性に様々な負荷を与えてきた事実を認識し、すべての人々と組織が、持てる叡智を結集、協力して、生物多様性の危機に立ち向かわなければならない。
私たちは、「自然保護宣言」に基づいて、生物多様性の保全を重視した自然保護活動を推進してきた。今こそ、生物多様性が将来の持続可能な社会にとって重要な基盤であることをより深く認識し、国際社会の一員として、すべての人々との間で役割と責任を分かち合い、連携・協力して生物多様性に資する行動を一層推進する決意である。
そこで、生物多様性の保全、生物資源の持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目指して、さらに積極的に取り組んでいくため、「自然保護宣言」に掲げた生物多様性への取り組みを進化させた「生物多様性宣言」をここに定める。
なお、この宣言および行動指針については、今後、進捗状況を把握するとともに、必要に応じて改善を図っていく。
私たちは、生物多様性が生み出す自然の恵み(生態系サービス)に大きく依存している事実に感謝する心を養い、地球誕生以来営まれてきた大気、水、土、生物を含む自然循環機能と事業活動との調和を目指し、自然との共生を志す。
私たちは、国境を越えた生態系サービスの恩恵を受けていることを改めて認識するとともに、生物多様性が損なわれつつあるという危機感をすべての人々と共有し、グローバルな視点に基づきつつ、多様な地域性にも配慮して生物多様性の保全を図る。
さらに、遺伝資源の利用にあたっては、生物多様性条約の理念を尊重するとともに、遺伝資源を次世代につなぐよう努める。
私たちは、自らの社会的責任の大きさを自覚し、事業活動に伴う生物多様性への影響低減や、生物多様性の実質的な保全につながる社会貢献活動に、自発的かつ着実に取り組む。取り組みにあたっては、個々の経営内容や経営理念に応じて、持てる経営資源を活用し、創意工夫を凝らして行動するよう心掛ける。
私たちは、省資源、省エネルギー、3R等の活動を通じて、限りある地球の資源を繰り返し利用する資源循環型の社会風土の形成に努め、生物多様性や気候変動の問題解決につながる経営をより一層推進する。
私たちは、奥深く計り知れない自然の摂理と、伝統や先人の叡智を学ぶとともに、生物多様性にとって低負荷な事業活動や環境技術の開発を促進することによって、経営革新を図り、持続可能な産業、暮らし、文化の創造を目指す。
私たちは、生物多様性への取り組みをより実効あるものにするため、国内外のあらゆる関係者との間で生物多様性に関する認識の共有を図り、連携、協力を積極的に推進する。
私たちは、生物多様性に関する深い認識のもとに、社会とのコミュニケーションを図りつつ、率先して生物多様性に対する社会的責任を果たすことにより、持続可能な地球社会のために貢献する。
私たちは、以上の7原則を尊重し、生物多様性のために一層固い決意で取り組むことをここに宣言する。