日本経団連は16日、「平成21年度税制改正に関する提言」を取りまとめ公表した。
わが国においては、本格的な少子高齢化・人口減少社会が到来する中で、社会保障制度に関する綻びが顕在化し、国民の安心・安全が揺らいでいる。また、先進国中最悪の財政状況を抱え、中長期的な経済活力に対する懸念が抱かれるなど、日本全体に閉塞感が漂っている。加えて、原燃料価格の高騰や米国をはじめとする世界経済の減速によって、足元の景気が停滞を続けている。日本経団連では、中長期的な視点から、税・財政・社会保障制度の一体改革に関する検討を続けているが、平成21年度税制改正においては、現下の経済情勢を打破し、抜本改革に向けた基盤を整えるよう提言している。提言の概要は、次のとおり。
(1)わが国製造業の海外生産比率が平均で3割を超える状況となり、海外子会社が得た成果を円滑に日本国内に還流させ、国内の成長に結び付けることが課題となっている。そのため、現行の外国税額控除制度を抜本的に見直し、欧州諸国で採用されている、海外子会社からの受取配当金を益金不算入とする制度を創設すべきである。また、企業のグローバル展開を阻害しないよう、移転価格税制およびタックスヘイブン税制の改善、租税条約ネットワークの充実・拡大も不可欠である。
さらに、昨今、米国が国際会計基準(IFRS)を採用する動きがあるなど、会計基準の国際的な統一の動きが加速しているが、会計基準の見直しが安易な増税につながることのないよう、税制と会計の調整が必要である。
(2)良質な住宅は社会的インフラであり、住宅投資は関連産業も含めた内需主導型経済成長の柱となる。低迷する内需拡大の起爆剤として、住宅ローン減税制度の延長・拡充など、住宅取得を支援する税制の拡充が必要である。
(3)低炭素社会の実現と経済活性化の両立のカギとして、省エネ・環境関連税制の拡充が必要であり、省エネ投資や省エネ製品への買換えの促進に資する税制などを構築すべきである。環境目的に新たな負担を伴う新税を導入することには強く反対する。また、道路特定財源については、納税者の理解を得つつ、公平・簡素な税制とすべきである。
(4)少子化対策の一環として、現在、所得控除方式になっている扶養控除を税額控除制度に組み替え、中低所得者層の子育て世帯へ集中的な減税となるような措置を講ずるべきである。また、社会保障制度改革の一環として、確定拠出年金のマッチング拠出の容認、拠出限度額の引き上げなどが必要である。
このほか、特定の事業用資産の買換え特例の延長・拡充、金融所得課税の一元化の推進、納税者番号制度の導入などが必要である。
日本経団連では、同提言に加え、税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言を近く公表予定であり、今後の政治動向に留意しつつ、積極的な働きかけを行っていく考えである。