日本経団連タイムス No.2905 (2008年5月22日)

提言「国民全員で支えあう社会保障制度を目指して」を取りまとめ

−公費負担中心など提起/目前の超高齢化社会に対応


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は20日、提言「国民全員で支えあう社会保障制度を目指して」を取りまとめた。政府が今年1月、「社会保障国民会議」を設置し、6月には中間報告、秋には最終報告を取りまとめる予定であることを踏まえ、同会議の中間取りまとめに経済界の考え方を反映させていくという観点から、社会保障委員会(森田富治郎委員長、井手明彦共同委員長)を中心に、社会保障制度改革のあり方について検討し、今般、中間的に取りまとめたものである。

■ 基本方向

「I.基本方向」では、社会保障制度の現状と改革にあたっての基本理念を示している。老年人口に対する生産年齢人口の比率が、2055年には1対1・3となるなど、人口構造が大きく変化する中、世代間扶養を基軸として社会保障制度を維持するのは困難になっていく。財政的にみても、わが国は危機的な状況にあり、さらに国民年金の未納・未加入問題をはじめ制度運営に綻びも生じているのが実情である。提言では、こうした現状にかんがみれば、今日の社会保障制度は危機に瀕していると言っても過言ではないとし、超高齢化社会が目前に迫る中、世代間扶養のシステムから国民全体で支える公費負担中心へと軸足を移していくなど、安心で持続可能な社会保障制度の確立に向けた改革は待ったなしの状況であると強調している。その上で、提言では、当面、「信頼性、自助努力を重視する制度設計」「経済活力の向上・財政運営との両立」「社会保障と税の一体的見直し」の三つを基本原則として改革に取り組むべきとしている。

この基本原則の下、「安心・安全な社会保障制度の構築」「中長期的な持続可能性の確保」に向け主だった課題を指摘している。「安心・安全な社会保障制度の構築」では、ICTの活用による給付と負担の「見える化」の推進と各制度の運用状況のモニタリングを求め、「中長期的な持続可能性の確保」に関しては、社会保障給付と負担との一体的改革の重要性を強調するとともに、ライフステージに応じた制度横断的な見直しが必要とし、現役期には自立・自助を促進する方向での見直しを、高齢期には所得・資産に応じた給付と負担の仕組みの導入を求めている。併せて、財政健全化、税制抜本改革との整合性を図る観点から、社会保険料負担から税負担へとシフトさせていくとともに、税制の抜本改革にあたり、社会保障費用を賄うため、消費税で対応する関係を明確にすべきとしている。

■ 各論

「II.各論」では、こうした改革への基本的な理念を踏まえた上で、年金制度、医療・介護保険制度など、4分野における改革の方向性を示している。具体的には、年金制度では、制度の不信感を解消するとともに、無年金者やその予備軍をなくす制度へと改革するという観点から、基礎年金の税方式化は有力な選択肢となり得ることを指摘している。医療・介護保険制度においては、効率化を推進するとともに、国民全体で支えるとの観点から、公費の投入割合を高齢者人口の増加スピードを踏まえて増やしていくべきとしている。その他、少子化対策としては保育サービスの量的拡大、雇用政策としては労働市場のマッチング機能の強化など、を盛り込んでいる。

なお、同委員会では、これらの問題について今後、さらに掘り下げた検討を進めていくこととしている。

【経済第三本部社会保障担当】
Copyright © Nippon Keidanren