日本経団連ではかねて、輸出入通関制度をはじめとする貿易手続の改革を政府当局に要望してきたが、このたび、関税・外国為替等審議会(中山信弘会長)の答申が公表され、平成20年に予定される関税定率法等の改正において産業界の声が反映された改革が実現する見込みである。
わが国産業の国際競争力強化を図る観点から、日本経団連の運輸・流通委員会(岡部正彦共同委員長、亀井淳共同委員長)では、2006年11月に「貿易諸制度の抜本的な改革を求める」提言(06年12月1日号既報)を公表した。その内容は、(1)輸出入通関制度の改革(2)原産地証明制度の改革(3)港湾行政の改革(4)省庁間連携の強化――の四つの柱から構成されている。
日本経団連では、これら改革の実現に向けて、日本貿易会、日本機械輸出組合、日本自動車工業会など関係団体と連携し、政府・与党に強く働き掛けてきた。07年2月、内閣の「アジア・ゲートウェイ戦略会議」に設置された「物流に関する検討会」に日本経団連も参画し、「アジア・ゲートウェイ構想」とその最重点項目の一つである「貿易手続改革プログラム」(07年5月公表)に産業界の考え方が反映されるよう努めた。その後、官民による協議を重ねてきた結果、昨年12月、通関制度をめぐる改革の方向が示された。
サプライチェーン全体における貨物のセキュリティー管理とコンプライアンスの強化を図る観点から、AEO制度(注1)の対象事業者を通関業者、船会社、航空会社、フォワーダー等国際物流に従事する事業者に拡大する。
また、これらAEO事業者を活用して適正な貨物管理が行われる場合には、保税地域に搬入する前に輸出者の工場・倉庫等から輸出申告が行えるように改正する。ちなみに現行では、特定輸出申告制度(注2)による輸出者を除き、保税地域に搬入した後、申告することが原則となっており、特定輸出申告制度の利用にあたってもコンプライアンス体制の整備が企業にとって負担となっていたため、利用が進んでいなかった(昨年11月末現在45社)。
輸出入貨物のリードタイム短縮への要請が高まっており、空港・港湾の深夜早朝利用推進が重要な課題とされている。そこで、臨時開庁制度について手数料を含め、見直しを行うとともに、AEO倉庫業者に係る保税蔵置場等許可手数料の見直しを行う。
AEO制度に関しては、米国・EUに加え豪州・ニュージーランドやアジア諸国との間でも相互認証について、既に協議等が開始されているが、今後さらに交渉を加速化させる。
今回紹介した改正は、財務省関税局の所掌範囲のものであるが、日本経団連ではこのほかにも、経済産業省原産地証明室所掌の原産地証明書発給制度の改善、国土交通省港湾局所掌の港湾管理者申請書式の統一などを働き掛けている。
原産地証明制度に関しては、既に昨年7月に原産地証明法施行規則の改正が行われ、発給手続の簡素化が実現した。また、港湾に関しては、港湾管理者ごとに異なっていた申請書式の統一モデル採用の動きも出ている。
これら一連の貿易手続の改革は、日本経団連の要望を勘案した結果であり、現状と比べて一定の前進をみたと評価できよう。日本経団連では、会員企業の協力を得て、わが国の貿易手続について、引き続き残された課題についてフォローアップを行う予定である。