日本経団連事業サービスは8日、「日本経団連キャリア・アドバイザー(NCA)フォローアップ講座」を開催した。11回目となる今回は、キャリア教育と短時間労働者に重点を置いたプログラムとなっている。
午前中の第1講座は、法政大学キャリアデザイン学部の八幡成美教授を講師に迎え、「キャリア教育からみた人材育成の現状」をテーマに講演が行われた。八幡氏はまず、キャリアデザインというとき、「人の生涯の経歴」を表すものがキャリアであり、それを設計していくことがキャリアデザインの役目であると述べた。その上で人材を育成するためには、気付きを与え、環境を整え、そして自らの努力によって人生を開花させるように導くことが重要であり、賃金を介さない仕事の経験もし、その中から「自分らしさ」を発見し、さらに自分自身の才能やキャリアを磨き、それを追求していく生涯学習も大切となってきていると指摘した。
一方、今キャリア教育が必要とされる背景としては、多様な働き方が可能になったことで若者が抱える将来への悩みや迷いが明らかになったことが大きいと指摘。その目的の1つ目は、社会の急激な変化に対応しながら、自ら学び、考え、行動できる自立的な人間や、自立したいという人たちの支援ができる人材に育て上げること、2つ目は、起こり得る問題を予測し、特定化し、どのように解決するかという能力を持った人材を生み出すこと、3つ目は、積極的に行動を起こし、その行動に責任を持ち、それに対する批判を冷静に受け止められる能力を持った人材をつくり出すことだと強調した。
また、近年の若者は、自立志向と裏腹に組織へのコミットメントが弱く、自分にとって興味のある仕事には積極的に取り組むが、社会の動向に対する関心は低く、人間関係も狭い範囲に限られる傾向にあると述べ、入社後の初任配置が気に入らなければ辞めてしまうような、先が見えない若者が増えていると分析。そのような状況で求められているのは、キャリア教育の一層の推進と、コアとなる能力を生かせる仕事やキャリアを選びながら、常に新しいことにチャレンジする「木登り型」人材の育成であり、基本であるOJTの効果的な実施に加え、節目でのOff―JTの実施が不可欠になっていると指摘した。
最後に、若者が自分自身のキャリアを構築していくために、また自分らしいキャリアを実現するためには、いかに「自分らしさ」を求めるかが重要であり、継続的に学び、しっかりした価値観を保ちながら、自ら気付き、自律的な行動を引き出すことが求められていると結んだ。
午後に行われた講座については、次号で掲載の予定。