日本経団連(御手洗冨士夫会長)は2月20日、「日・スイス経済連携協定の早期締結を求める」と題する提言を政府・与党首脳に建議するとともに、公表した。1月19日に両国首脳が経済連携協定(EPA)の交渉開始で合意したことを評価するとともに、利便性の高い原産地証明制度の導入や模倣品、海賊版対策などに関する第3国における協力などにつながる、先進国同士にふさわしい包括的で質の高いEPAの早期締結を求めている。
今回の提言では、スイスとの経済連携強化の意義として、スイスとの間の貿易・投資関係の拡大が望めることに加えて、(1)WTOやOECDなど国際的なルールづくりの場において緊密な協力関係にあるスイスとの経済連携を強化することによって、わが国の主張が国際的なルールに反映されやすくなること(2)自由貿易協定(FTA)の先進国といえるスイスとの間で包括的で質の高いEPAを実現することは、わが国がさまざまな国とEPAを拡大・深化していく中で他の国・地域と交渉するに当たって大きなプラスとなること――の2点を指摘している。
そのような意義を有する日・スイスEPAに期待される効果としては、次の4点を指摘している。
日本からスイスへの輸出の7割には関税がかけられており、乗用車、テレビなどに課されている従量税を含めて関税が撤廃されれば、日本からの輸出拡大が期待できる。また、サービス貿易では、いわゆるネガティブ・リスト方式を採用することによって、現行のWTOの約束表を超えた高度な自由化が期待される。特に、コンピューター、電気通信、音響・映像サービスにおける自由化が重要である。
スイスは、認定輸出者制度(輸出国当局が認定した輸出業者に「インボイス申告」の使用を認める制度)を採用し、輸出企業の原産地証明コストを大幅に軽減している。これに加え、スイスは一部の国との間で、自己証明制度も採用している。わが国としても、スイスとのEPAにおいて、これらを参考にした利便性の高い制度を導入し、そのメリットを検証することによって、他の国・地域とのEPAへの採用を検討すべきである。
スイスに対する直接投資の障壁として、取締役の国籍・居住要件、滞在許可証発給の人数制限がある。EPAによって、これらが不適用となれば、投資環境が改善し、日本からスイスへの直接投資の促進につながることが期待される。
従来のEPAでは規定されてこなかった模倣品、海賊版対策に関する第3国における協力など、今後のEPAのモデルとなるような質の高い知的財産権の保護に関する規定が盛り込まれることが期待される。