日本経団連の産業技術委員会(庄山悦彦委員長、桜井正光共同委員長)と産業問題委員会(齋藤宏共同委員長、岡村正共同委員長)は8日、経団連会館で合同会合を開催し、政府知的財産戦略推進事務局の荒井寿光事務局長から、同事務局が5月末にもとりまとめを予定している「知的財産推進計画2005」策定に向けた取り組みについて説明を聴取後、意見を交換した。また、同合同委員会でとりまとめている提言「『知的財産推進計画2005』の策定に向けて(案)」の審議を行った。
荒井事務局長はまず、これまでの日本経団連の取り組みに対し、「知財戦略をリードしてきた」と評価した。一方、知的財産戦略事務局の今後の方針については、知的財産の創造・保護・活用のサイクルをより早く大きく回すことで、『世界一の知財立国』をめざしていきたいと説明。その課題として、(1)特許制度については特許審査の迅速化に取り組む (2)日米欧3極の協力や日米特許FTA構想など、世界特許システムに向けた取り組みを進める (3)機械翻訳が可能な特許の明細書の表現をめざす――などを挙げた。
知的財産権全般に関する訴訟を扱う「知財高裁」の設置については、人材づくりや国内外への発信などの課題を克服していく必要があると指摘。いわゆるニセモノ対策については、国際的な連携を強化し、外国市場対策を積極的に展開するほか、特許侵害品の水際での判断・差し止めを迅速に行う制度の確立、ネットオークションでの侵害の取り締まり強化などが重要と述べた。
また、荒井事務局長はコンテンツ振興のためには、東京国際映画祭の発展や映像産業振興機構の取り組みの開始、コンテンツ・ネットワーク・エレクトロニクスが一体となった戦略づくり、デジタル化時代のビジネスモデルの確立、コンテンツやライフ・スタイルビジネスの振興と観光立国づくりの取り組みの連携が課題であるとした。
さらに知的財産人材育成には、必要な人材の分析や求められる人材のスキルなどを示すグランドデザインが必要との認識を示したほか、企業への期待として、(1)事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の三位一体での立案 (2)コンテンツビジネスの海外進出、産学連携の進展、標準特許に関する課題の検討 (3)中小・ベンチャー企業の知的財産を尊重すること――などを挙げた。
続いて行った意見交換では、ユーザーにサービスを提供する視点での私的複製のあり方や私的録音補償金制度の見直しを検討してほしいとする日本経団連側からの意見に対し、「日本のユーザーが海外のユーザーより不便であってはいけない」(荒井事務局長)、「著作権分科会で一刻も早く検討するが、関係者の合意が最優先」(森口泰孝・知的財産戦略推進事務局次長)との見解を示した。
また、石田正泰・産業技術委員会知的財産部会長が、産学連携に向けた契約条件などのルールの弾力化に向けて話し合いの場を広げてほしいと要請したほか、「中小・ベンチャー企業の知的財産を尊重することが基本であることを大手企業側としても確認したい」との認識を示した。
さらに、依田巽・産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会長が「映像産業振興機構については『知的財産推進計画2004』で示されたとおり、民間で設立した。計画どおり国の強力な支援を求めたい」と要望。また、「携帯電話に直接、音楽をダウンロードして楽しむ『着うた』ビジネスなどは日本でも相当進展しつつある」とコンテンツビジネスの現状を語った。