日本経団連タイムス No.2739 (2004年9月23日)

景気の自律的回復に向けた措置など強調

−日本経団連が平成17年度税制改正で提言


日本経団連は21日、秋以降の政府・与党における年次税制改正論議に向けて、「平成17年度税制改正に関する提言」をとりまとめ、政府・与党ほか関係方面に建議した。今回の提言は、基本的考え方として、景気を自律的な回復軌道にのせるために必要な税制措置の実現や、税制面における国際的イコール・フッティングの確立、財政健全化や社会保障制度改革、国・地方の三位一体改革と整合性のとれた税体系の構築を強調。特に、税・財政、社会保障制度を一体的に改革することを通じ、中長期的に潜在的国民負担率を50%程度に抑制すべきであると主張している。また、社会保障を中心とする今後の歳出の増加に対応するため、平成19(2007)年度に消費税率を10%まで引き上げ、その後も段階的に引き上げていく必要があるとしている。その上で、当面の平成17(2005)年度税制改正に向けて、同提言が重点課題としている点は次のとおり。

1.企業年金資産に課税する特別法人税の廃止

公的負担を抑制し、経済社会の活力を維持・向上させていく観点から、公的年金制度のスリム化が今後避けられない。そのため、企業年金を中心とした自助努力の重要性が高まっている。
したがって、企業年金の充実を大きく阻害する特別法人税を、17年度税制改正において確実に廃止すべきである。

2.環境税は断固反対

地球温暖化への対応は、技術革新と地道な省エネ対策を基本とすべきである。すでに産業部門では、日本経団連の「環境自主行動計画」に沿って、温室効果ガスの抑制に努めている。これに対して、化石燃料に課税するいわゆる環境税は、エネルギー効率のよい日本から、環境税が存在しない途上国等へ生産をシフトさせるなど、地球規模の問題解決に逆行するものであり、断固反対である。

3.住宅税制の拡充

良質な住宅、住環境の充実は、国民が生活の豊かさを感じる上で不可欠な社会的インフラであり、また、住宅への投資は景気刺激効果も大きい。そこで、住宅ローン減税については、今後も一定規模を維持する必要がある。
一方、住宅のリフォーム等は、住宅の質の向上や、地域経済への波及効果が大きいものの、自己資金の場合は減税の対象とならない。そこで、17年度税制改正では、ローン減税の対象となっていない自己資金による住宅投資について、所得税から税額控除する措置を導入すべきである。

4.日本型LLC等税制への早期取り組み

LLC(Limited Liability Company)は、法人格を持ち、さまざまな経済活動の主体となることができる一方、税制上は法人段階ではなく、出資者段階でのみ課税される(パススルー課税)仕組みであり、欧米ではジョイントベンチャー等に積極的に活用されている。日本では、17年度に予定される会社法の現代化において、「合同会社(仮称)」の名称で創設される予定であり、これに対する税制面の手当てとしては、現物出資時の課税繰延とパススルー課税の適用が求められる。

5.人材投資促進税制の創設

企業競争力を強化する上で、人材への投資は極めて重要である。各企業とも、それぞれのやり方で取り組んでいるが、これをさらに加速するための税制措置を創設する必要がある。

【経済本部税制担当】
Copyright © Nippon Keidanren