厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会(部会長=貝塚啓明・中央大学法学部教授)は7月30日、「介護保険制度見直しに関する意見」をとりまとめた。
同意見は、介護保険制度は持続可能性が重要であり、給付の効率化・重点化を進めるために、(1)制度全体を「予防重視」型に転換 (2)「施設給付」の見直しを実施――すべきであるとしている。
予防重視とは、軽度者の要介護状態の改善・悪化防止に必ずしも効いていない現行給付を、新「予防給付」として改善しようというもの。市町村を責任主体として介護予防プランに沿った給付を行うが、介護給付と予防給付を合わせて給付増となる恐れもあり、効果の検証が重要となる。
施設給付については、在宅サービス受給者との利用者負担の不均衡を是正するため、居住費・食費に関する保険給付の範囲・水準を見直すこととしている。この見直しは、日本経団連が強く求めてきた点である。
また、同意見では、独居や痴呆に対応するために、市町村が独自の「地域密着型サービス」を提供することを提案している。このサービスは、市町村の既存の保健事業等を再編して介護保険内に位置付け、要介護認定で非該当となった者だけでなく、市町村の健診事業等で介護予備軍とされた者にも給付を行うというもの。
しかし、その財源が明らかでないことから、日本経団連は保険料収入ではなく、市町村独自の財源で賄うべきであると主張している。
また、今回の見直しにおける一番の争点となっている被保険者・受給者の範囲拡大については、同部会の審議で意見がまとまらず、同意見では賛否両論併記となっている。この点については同部会で9月以降も引き続き審議が行われることとなっており、その審議において事業主側は、日本経団連がとりまとめた「介護保険制度の改革についての意見」(4月22日号既報)に基づいて、被保険者の範囲拡大は極めて慎重であるべきとの主張を引き続き行っていく。
昨年5月に設置された介護保険部会は、2000年の介護保険制度創設時に介護保険法附則に盛り込まれた、制度施行後5年後を目途とした見直しの審議を行っており、保険給付の内容・水準や負担のあり方、被保険者・受給者の範囲が論点となっている。