経営タイムス No.2719 (2004年4月22日)
日本経団連(奥田碩会長)は15日、公正取引委員会が3月30日にとりまとめた「独占禁止法改正(案)の概要」に対する意見を発表した。同意見書では、公正取引委員会が課徴金を行政制裁金と位置付けた上で、措置体系の改革をめざしていることを評価する一方、今回の「概要」に基づいて独占禁止法改正を進めることに、日本経団連として、あらためて反対の意向を表明している。
日本経団連はこれまで、「独占禁止法の措置体系見直しについて〜日本経団連としての見解」(2003年9月16日)、「『独占禁止法研究会報告書』に対する意見」(2003年12月1日)を公表。自由経済の基本法である独占禁止法の重要性が一層増大しているとの認識を示すとともに、独占禁止法違反行為の抑止のためには、官製談合の横行とその背景にある予算の硬直性、政治の介入などの構造的な問題、公正取引委員会の権限・執行体制の整備も含めて、独占禁止法の措置体系を抜本的・総合的に充実かつ強化することが喫緊の課題であるとして、その対応を求めてきた。
これは、2003年に自民党が政権公約として掲げた「自由な経済活動を保証し、企業の国際競争力を強化する観点から」、独占禁止法の措置体系の抜本的・全体的な見直しを行うとの考え方と軌を一にするものである。
しかし、公正取引委員会が、今国会への法案提出を目標に、先月末に発表した「独占禁止法改正(案)の概要」は、日本経団連や関係各方面がこれまで再三にわたって指摘してきた根本的問題や理論面での数々の問題点を置き去りにしたまま、事業者に対する制裁を強化しさえすれば独禁法違反がなくなるとの考えの下、課徴金制度の強化を図るものである。このような短絡的な姿勢・改正は、日本の独占禁止法の将来、ひいては市場経済の健全な発展を阻害するものであり、容認できるものではない。
そこで、日本経団連は、経済界の意見をあらためて発表し、公正性と透明性を確保した独占禁止法改正の実現を求めていく必要があると考え、今般、同意見書をとりまとめ、関係各方面に働きかけることとした。
同意見書のポイントは次のとおり。
公正取引委員会が、課徴金を行政制裁金であると位置付けた上で、措置体系の改革をめざしていることを評価する。
しかしながら、公正取引委員会が先月末に発表した「独占禁止法改正(案)の概要」は、(1)課徴金算定率の引き上げ根拠 (2)課徴金と刑事罰との調整方法 (3)減免制度の趣旨・具体的内容 (4)審査・審判機能の分離の制度的担保――などをはじめとする諸点で、制裁としての課徴金にふさわしい制度設計になっているとは言いがたい。さらに、法律的論点からも検討を重ねる必要がある。
加えて「概要」は、今回の独禁法改正の出発点となった独占禁止法研究会報告(2003年10月28日)から大きく乖離している上に、2003年12月24日に公正取引委員会が発表した「基本的考え方」とも異なる内容となっている。公正取引委員会は、その変更理由を明らかにするとともに、「概要」について、広く学識者・国民各界の意見をあらためて聴くべきである。
以上の理由から、日本経団連としては、今回の「概要」に基づき、独占禁止法改正を拙速に進めることには反対である。
また、独占禁止法違反を根絶するためには、課徴金の見直しと合わせて、公共入札制度の改善、官製談合に対する発注者側への処罰強化、不当廉売規制の強化などを、同時並行的・整合的に進めるべきである。