経営タイムス No.2697 (2003年10月23日)
日本経団連は21日、2003年度規制改革要望をとりまとめ発表した。同要望は、産業競争力の強化と民間主導による経済活性化を図るため、会員企業から寄せられた要望を16分野306項目の個別規制改革要望に整理したもの。規制改革に関する政府側の受け皿である総合規制改革会議が、今年度末で設置期限を迎えることから、構造改革特区を含む規制改革全般を扱う後継機関設置の必要性を訴えるとともに、後継機関に期待される役割などについて提言している。
今年度の要望では、経済のグローバル化が急速に進む中で、国際競争力の強化は時間との競争であることを強調、「民間でできるものは民間に任せる」ことを基本とした大胆かつスピード感ある規制改革の推進を求めている。
規制改革の重点課題としては、総合規制改革会議が構造改革特区本部と連携して今年6月に実施した「集中受付月間」のような、定期的かつ集中的な規制改革要望の受付を制度化することや、経済財政諮問会議との連携を密にして社会的規制への取り組みをさらに強化するよう要望。
また、総合規制改革会議が来年3月末に設置期限を迎えることから、規制改革推進に空白期間を作らないため、速やかなポスト総合規制改革会議設置の必要性にも言及。特区・全国の区別なく規制改革全般を所掌する組織とすることや、民間ならではのアイデアを積極的に検討・提案をする組織としていくために、民間人主体の組織を設置すべきと主張している。
ポスト総合規制改革会議には、日本経団連が今年5月に発表した「規制改革プログラム」で提唱した諸課題の解決にあたるよう要望している。具体的には、(1)個別規制改革推進の制度作り(2)各種業法の分野横断的な見直し(3)新設規制に関する評価・審査体制の確立(4)新たな規制改革推進計画の策定――などを求め、その法的基盤整備の観点から「規制改革基本法(仮称)」の制定に向けた具体的な検討を求めている。
そのほか、国民の理解を深めるために、規制改革白書の定期的な作成・公表などを提案。
また、規制改革推進には何より政治のリーダーシップの発揮が求められることから、民間の活力と地方のやる気を引き出す規制改革を推進する小泉内閣の基本方針を全閣僚が共有し、思い切った規制改革の断行を求めている。
要望として取り上げた分野は、(1)雇用・労働(2)医療・介護(3)企業年金(4)社会保険(5)教育(6)流通(7)土地・住宅・都市再生(8)廃棄物・リサイクル/環境保全(9)危険物・防災・保安(10)情報・通信(11)金融・保険・証券(12)運輸(13)エネルギー(14)通商(15)農業(16)その他――の16分野。要望項目数は306に及び、そのうち新規要望が173項目と、全体の6割近くにのぼっている。
派遣労働者特定行為の全面解禁
いわゆる「混合診療」の容認
任意継続被保険者制度の見直し
医療用配合剤に関する規制緩和
共同住宅・オフィスビルの容積率算定基準のさらなる合理化
分社化などに対応した廃棄物処理法の見直し
廃棄物処理施設設置などの許可申請手続きに伴う提出書類の簡素化
保安法令の重複適用の排除
税務書類の電子保存範囲の拡大
固定資産税の納付様式の統一および手続きの電子化
輸出入・港湾手続きのさらなる簡素化の促進
電力貯蔵用NAS(ナトリウム・硫黄)電池の設置規制の緩和
企業内転勤の在留資格要件緩和
確定拠出年金制度における柔軟な制度設計の確保