経営タイムス No.2676 (2003年5月22日)
日本経団連(奥田碩会長)の行政改革推進委員会(出井伸之共同委員長、草刈隆郎共同委員長)は15日、東京・永田町のキャピトル東急ホテルで鴻池祥肇・構造改革特区担当・防災担当大臣を来賓に迎えて開催した。冒頭あいさつで奥田会長は、構造改革特区の推進に対して全面的な支援を表明。これを受けてあいさつした鴻池担当相は、今国会で審議されている構造改革特区法の改正法案など、構造改革特区の進捗状況を報告。その上で、先月認定した構造改革特区をきっかけとして「一歩前進はしたものの、依然として課題は多い」と語り、日本経団連に理解と協力を求めた。あいさつ後、鴻池担当相と参加者との意見交換を実施したほか、同委員会の鈴木祥弘・規制改革推進部会長が同部会でとりまとめた意見書案について説明、審議を行った。
奥田会長は冒頭のあいさつで、「民主導・自律型の経済社会システムの実現には規制改革の推進が極めて重要な課題」との認識を示し、特に財政・金融政策において期待した効果が十分に出ていない現状では、「よりスピード感をもって、大胆な規制改革を実施していくことが急務となっている」と指摘。その上で、鴻池担当相が進めている構造改革特区制度が突破口となって、「規制改革全体に勢いがつくことを大いに期待している」と期待感を表した。
また、医療・教育・農業分野への株式会社の参入が、一定の制約があるとはいえ、構造改革特区の下で認められつつあることを例に挙げ、「改革の扉が開かれつつあることは、ひとえに鴻池大臣の行動力とリーダーシップの賜物である」と高く評価した。
さらに、今後の規制改革の流れをより確かなものとするために、「地方公共団体と連携をとりつつ、積極的に特区制度を活用するなど、政府の取り組みを全面的に支援したい」と語り、日本経団連として一層の支援・協力をする姿勢を表明した。
これを受けてあいさつに立った鴻池担当相は、現在行われている通常国会で審議されている構造改革特区法の改正法案のうち、
また、医療分野における特区での自由診療(保険外診療)に限った株式会社の参入については、「半歩前進したが、総合規制改革と連携して十歩二十歩の前進をめざして努力していかなくてはならない」と決意を述べた。さらに、国公立病院の大半が赤字経営である現状を踏まえ、医療にも市場原理を導入することで赤字の解消、さらには雇用の創出につながるとの考えを示した。
しかし一方で、利害関係から、自らの規制を守ろうとする省や団体があると指摘、「小泉総理と違う方向を向いている大臣もいる」と不満をもらした。その上で鴻池担当相は、小泉総理と考えを同じくして改革を進め、民間や地方が力を発揮しやすいよう、規制改革や地方分権を進める重要性を強調。そのためには政治のリーダーシップが重要であると主張した。
最後に鴻池担当相は、「最終的には、特区など必要ないという日本にしなければならない」と力強く訴えた。
■懇談・審議
その後の懇談では日本経団連側から、「(内閣府の)総合規制改革会議と連携を強化し、成果を倍化してほしい」との意見のほか、医療分野への株式会社のさらなる参入や、農業の株式会社参入について、すでに認められた農地リース方式だけではなく、所有方式の解禁の実現を求める意見などが出された。
これに対して鴻池担当相は、日本経団連にはこれまで通り規制改革への支援をお願いしたいと述べた上で、「ご指摘いただいた方向で着実に進めていきたい」と応えた。
鴻池担当相が退出した後、同委員会の鈴木・規制改革推進部会長が同部会でとりまとめた意見書案について説明、審議を行った。同意見書案について、この日の行政改革推進委員会に参加していた総合規制改革推進会議の宮内義彦議長は、「規制改革の現代の課題を的確にとらえた上での具体的な支援策と認識している」と述べるとともに、今後の議論で大いに参考にしたいと感想を語った。
最後に出井共同委員長は、「この意見書は20日の理事会で審議を経て発表し、政府関係先に建議する」と結び、散会した。