経済くりっぷ No.19 (2003年4月22日)

3月26日/報告

環境自主行動計画第三者評価委員会報告書を公表


日本経団連では、1996年に環境自主行動計画を策定して以来、その実現状況についてフォローアップを実施しており、昨年7月には、環境自主行動計画の透明性・信頼性の向上を図るため、第三者評価委員会(委員長:山口光恒慶応義塾大学教授)を設置した。第三者評価委員会は、10月から今年3月にかけて2002年度環境自主行動計画フォローアップの評価を行い、評価報告書を取りまとめた。以下はその概要である。


環境自主行動計画第三者評価委員会
2002年度評価報告書(概要)

2003年3月26日
環境自主行動計画第三者評価委員会

1.はじめに

(1) 環境自主行動計画について

日本経団連の環境自主行動計画は、自主協定と同等の性格を有することが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第3次報告でも認められている。

(2) 第三者評価委員会設置の経緯

地球温暖化対策推進大綱は環境自主行動計画を産業部門の温暖化対策の中核とする一方、透明性・信頼性の向上が課題と指摘した。そこで同計画の透明性・信頼性の評価、改善点の指摘のため第三者評価委員会が設置された。

(3) 評価の対象範囲および方法

2002年度はデータの収集、集計方法の妥当性を評価した。評価に当たり日本経団連事務局から説明を聴取、各業種提出データを点検するとともに、数業種からヒアリングを実施した。

2.全体評価

各企業提出データは省エネ法報告等の裏付けがあり、排出量計算式はIPCC方式に則っている。カバー率、集計方法等は概ね問題ないが、フォローアップ対象範囲の調整、排出量増減の理由の説明等が不十分である。

3.短期的課題(第6回フォローアップまでに検討)

(1) フォローアップ対象範囲の調整

ダブルカウントを避けるため、業種間、部門間の調整が必要である。また業界団体非加盟企業は含めないほうがよい。

(2) 2005/2010年度予測値の前提

予測値算出の前提には統一経済指標を用いることが望ましい。

(3) 総量目標/原単位目標採用の理由の明確化

総量目標と原単位目標の長所短所を考慮した目標設定の検討が中期的課題であるが、当面はそれぞれを採用する理由を明示すべきである。

(4) 排出量増減の理由説明

個別業種版では、生産量の増減、海外移転、設備稼働率の変化、製品変化、産業構造変化等、排出量増減の理由を詳細に説明すべきである。

4.中期的課題(3年を目安に検討)

(1) 排出量増減の要因分析

排出量の増減要因と今後の排出量の推移への影響、その結果としての目標達成の見通し、目標の妥当性につき、より綿密な数量分析が必要。

(2) LCA (注) 的観点からの評価

従来の産業部門に限定した実績評価に加え、製品のライフサイクル全体でみた排出削減実績の評価方法の構築が望まれる。

(注)LCA:ライフサイクルアセスメント
原材料採取から製造、流通、使用、廃棄に至るまでの製品の一生涯(ライフサイクル)で、環境に与える影響を分析し、総合評価する方法。製品の環境分析を定量的、総合的に行う点に特徴がある。
(出所:「平成14年版環境白書」より)

(3) 専門機関による評価方法およびデータベースの開発ならびに評価

(1)(2)の評価方法の開発ならびにデータベースの構築、さらに評価そのものを専門の外部研究機関に委ねるのもひとつの方法である。

5.おわりに

各業種が上述の課題に自主的かつ積極的に取り組み、環境自主行動計画の信頼性・透明性を向上させるよう期待する。

以 上


〔環境自主行動計画と第三者評価委員会〕
〔経団連(現 日本経団連)は1996年に環境自主行動計画を策定し、以後、毎年フォローアップを実施してきた。2002年現在、産業・エネルギー転換部門34業種が「2010年度のCO2排出量を1990年度比同水準以下に抑制する」ことを目指し努力している。2002年3月に改訂された地球温暖化対策推進大綱でも、こうした産業界の自主的取組みの成果が認められ、産業部門の対策の中核として位置付けられたが、同時に「第三者による認証・登録制度の導入」が検討課題として盛り込まれた。これを受けて日本経団連では、2002年7月23日、環境自主行動計画第三者評価委員会を設置し、自主行動計画フォローアップを継続的にレビューすることとした。
〔委員構成〕
委員長山口光恒(慶應義塾大学経済学部教授)
委員青柳 雅(三菱総合研究所地球環境研究本部長)
内山洋司(筑波大学機能工学系教授)
佐藤博之(グリーン購入ネットワーク事務局長)
根上卓也(神戸製鋼所顧問)
原 早苗(埼玉大学経済学部非常勤講師)

《担当:環境・技術本部》

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