一般社団法人 日本経済団体連合会
【日中経済協会合同訪中代表団】
〔訪中団の成果などについて問われ、〕世界中で分断と対立が先鋭化する中、日中両国が「戦略的互恵関係」を推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築していく必要性を確認できたことは大きな意義がある。
私自身の印象に残った点は二つある。一つ目は、様々な要望に対し、丁寧かつ真摯に受け答えいただいたことである。日本側からは、安全・安心かつ透明・公平で、予見可能なビジネス環境を整備する必要性を訴え、また、民生用に使用する黒鉛やアンチモン等の輸出管理について、真に安全保障に係るものに限定するよう要望した。中国側の回答は、内容においては必ずしも満足できるものではなかったが、要望を一つひとつ正確に把握し、回答していただいた。
二つ目は、中国側が、中国経済の先行きに対して非常に自信を持っているということである。何副総理は会談で、中国は質の高い発展に向けて取り組んでいるとおっしゃっていた。経済発展に対する民営企業の果たす役割を重視しており、副総理との会談のまさに当日に、習近平国家主席以下で中国の名だたる民営企業のトップを招いた座談会を開催したとの紹介があった。また、中国では中間層が育ってきており、約5億人の中産階級の消費の増加に伴う国内市場の拡大が周辺諸国にも好影響を及ぼしているという力強い話もあった。
〔トランプ関税に対する中国側の言及について問われ、〕ルールに基づく国際経済秩序を共に築いていこうという話があった。
【ロシア・ウクライナ戦争】
〔ロシアとウクライナの停戦に向けた動きについて問われ、〕ロシア・ウクライナの戦争終結に向けては、当事者のウクライナが関与した上で、永続的な内容となることが重要であり、各国の外交努力に期待したい。G7首脳会談(24日開催)で石破総理が述べられたとおり、「力による現状変更が可能」との誤った教訓が引き出されないよう注意が必要である。
【トランプ関税】
〔トランプ米大統領が打ち出している、米国の輸入する鉄鋼や自動車等への関税措置が実施された場合の日本企業への影響について問われ、〕トランプ米大統領は、様々な関税措置を検討している。カナダ・メキシコからの輸入品に対する25%の関税措置は、1か月延期されていたが、3月4日から適用されたら、メキシコに進出しているわが国の自動車メーカーや部品メーカーにとって影響があるだろう。
また、鉄鋼・アルミニウムは素材であり、関税措置により幅広い影響が予想され、いずれは米国内でインフレという形で影響が出るのではないか。日本経済というよりも世界経済全体への悪影響を懸念している。
武藤経済産業大臣が3月に訪米予定という報道に接しており、日本へのマイナスの影響を最小化すべく交渉されることを期待している。
【新卒採用】
〔健全な新卒の就職活動のあり方について問われ、〕健全な新卒就活に向けて、重要なことは、学生の本分である学修時間の確保である。その意味で、大学3年生の2月まではしっかり勉学に励み、3月1日に広報活動開始、6月1日に選考活動開始、10月1日に正式内定開始という、政府の「採用選考活動に関する日程ルール」は、解禁前に内定が出ているなど実態との乖離が指摘されるものの、一定の存在意義がある。
【春季労使交渉】
〔春季労使交渉の現状と見通しについて問われ、〕今年の春季労使交渉は、賃金引上げのモメンタムが中小企業まで広く波及するかどうかが焦点である。大企業は製造業を中心として3月12日に集中回答日を迎え、その後、3月中旬~4月にかけて交渉して決定するところが多い。中小企業は、その動向も見ながら5月~6月まで交渉を行うことが一般的であり、むしろここからが本番と言える。
経団連は、2025年を賃金引上げの力強いモメンタムを「定着」させる年と位置付けており、「ベースアップを念頭に置いた検討」の呼びかけや、労務費を含む適切な価格転嫁が重要という認識をソーシャルノルム(社会的規範)として浸透させるための活動を展開している。そうした動きが中小企業にも広がるよう活動を続けていく。
【金融政策】
〔日銀がマイナス金利政策を解除してから間もなく1年が経過する中で、日銀の政策判断の評価や、経済、企業への影響を問われ、〕長きに渡るデフレ時代に異次元の金融緩和を続けてきたことの影響を踏まえ、コストプッシュ型インフレに起因する物価上昇に対応し、物価の安定を図るべく、日銀は昨年、金融政策を転換したのであろう。結果として、基調的な物価上昇が実現しつつあり、労務費の上昇が物価上昇の多くの部分を占めている現状に鑑みれば、金融政策の転換は適切な判断だったと言えるだろう。
ただし、依然として実質金利はマイナスであるものの、思い切って政策金利を引き上げる段階ではない。日銀は、物価上昇を抑えながら、同時に景気への悪影響も生じさせないよう、慎重に判断されているのではないか。経済界も、金利のある世界に徐々に適応しなければならず、そのためにも適度な物価上昇に負けない賃金引上げを継続しなければならない。
【高額療養費制度】
〔高額療養費制度の見直しについて考えを問われ、〕命を守ることは大切であり、診療が受けられないことが原因で命を落とすということがあってはならない。他方、中福祉低負担国とも言える日本では、社会保障制度が財政上の危機に瀕しており、見直しは必要である。応能負担を基本とした、税と社会保障の一体改革が不可欠であり、そのため、所得だけを考慮するのではなく、マイナンバーの活用による資産の捕捉を通じた応能負担を進めなければならない。