一般社団法人 日本経済団体連合会
【令和7年度与党税制改正大綱】
〔令和7年度与党税制改正大綱の受け止めを問われ、〕取りまとめに携わった関係者の尽力に敬意を表したい。
防衛財源の確保については、2026年4月より法人税額に4%の付加税率が課されることとなった。防衛力強化は、企業も含め日本の社会全体が裨益するため、企業も負担をすることにやぶさかではない。今後は、先送りされた所得税についても議論がなされるものと承知している。
いわゆる「103万円の壁」については、国民民主党が、現役世代の可処分所得の増加や、働き控えの抑制を図る必要があるとの問題提起をしたという点を評価している。
ただし、所得税に関する103万円の壁だけでなく、社会保険に関する106万円の壁や130万円の壁など、次なる壁が存在している。また、わが国の財政状況は極めて厳しく、今後は金利のある世界の到来による国債の利払い費の増加や、自然災害の激甚化・頻発化による財政支出の増加も想定される。103万円の壁の引上げにより年間7~8兆円とも言われる大幅な税収減となれば、わが国の財政規律は保たれない。
したがって、個々に議論するのではなく、財政規律の問題、税の問題、社会保障の問題を一体的に解決しなければならない。一体改革の全体設計図を描き、優先順位やスケジュール感を示す必要があり、与野党で議論を重ねてほしい。
【日産・ホンダ経営統合】
〔日産自動車と本田技研工業の経営統合に向けた協議・検討の開始の報道について問われ、〕個別の案件についての詳細なコメントは差し控える。
自動車産業は、日本経済を牽引する基幹産業である。100年に一度の大変革期を迎え、世界的に競争が激化する中、各社の強みを活かしながら活発な連携や事業再編を進めることは、技術革新や国際競争力の強化につながるだろう。一般論でいえば、こうした経営統合の動きは大いに歓迎すべきことであり、話し合いが順調に進むことを期待している。
【石破総理との面会】
〔石破総理との面会(23日)について問われ、〕臨時国会会期中のご多忙の折、お時間をいただいたことに感謝申し上げたい。実りある面会となった。
面会の中では、「FUTURE DESIGN 2040」の要点をご説明し、我々の問題意識を総理にご理解いただくとともに、関心を示していただいた。とりわけ地方創生について、総理は、幅広く、深い見識をお持ちであり、現在の地域経済社会の問題点を解消するための方策についても議論した。
〔「FUTURE DESIGN 2040」で掲げた「新たな道州圏域構想」について問われ、〕各地域が似たような地域振興策を講じる地方創生では、均質的な地域が量産されるだけであり、限界がある。「FUTURE DESIGN 2040」では、人口500万人程度の道州圏域それぞれが、各地域の魅力を全面的に打ち出して切磋琢磨することで、地域経済社会が自律的・持続的に発展する「新たな道州圏域構想」を掲げた。そうした考えを、本日、石破総理にも申し上げた。構想の実現に向けた仕組みをどう作っていくかが今後の課題であろう。
【今年の漢字】
今年の漢字には「論」をあげたい。今年は世「論」が大きく揺れた1年だった。生成AIやSNSにより、真偽を問わず情報が氾濫し、客観的事実よりも個人の感情や信念が世「論」形成において影響を持つ「ポスト・トゥルース」の時代に入っているのではないか。そうした時代において必要なものは討「論」・議「論」であろう。
経団連は先日公表した「FUTURE DESIGN 2040」において、正「論」を主張している。日本中で実りある議「論」がなされることも期待して、今年の漢字は「論」としたい。
〔自公連立政権が少数与党となった今の政治における議論について問われ、〕少数与党であるがゆえに侃々諤々の実りある議論がなされることはよいことである。日本社会や国民のためを思い、与野党が正論をぶつけ合うような議論を期待したい。
ともすれば、与野党が給付の競い合いをすることになりかねないが、給付と負担(財源)はセットで考えなければならない。与党も野党も責任政党であろうとすれば、政策の実行の責任も担保して、議論を重ねてほしい。