一般社団法人 日本経済団体連合会
【日中経済協会合同訪中代表団】
〔日中経済協会合同訪中代表団(1月23日-26日)の成果や今後の課題について問われ、〕日中両国は、2022年に国交正常化50周年、2023年に平和友好条約45周年を迎えた。また、先の日中首脳会談(2023年11月16日)において、両国首脳は「戦略的互恵関係」を再確認し、建設的で安定的な日中関係を構築しようとしている。4年ぶりの訪中団はそうした動きを後押しする意味でも時宜を得たものであり、意義深い。
李強総理との会談では、透明かつ予見可能性の高いビジネス環境の整備や、科学的、客観的事実に基づかない規制の撤廃などを要望した。また、商務部との懇談では、反スパイ法や日本産水産物等の輸入規制といった個別の課題について、相当突っ込んだ意見交換ができた。
李強総理の発言で、①日中関係を平和、友好、協力という理念のもとで一層推進していくこと、②中国は世界経済に貢献すべく市場開放を継続すること、③公平、安全かつ安定したビジネス環境を提供すること、の3点が印象深かった。
今回の訪中で、現状や課題をめぐり、双方の主張と相違点を認識できたが、諸課題が即解決するわけではない。これを皮切りに、政治や経済界などあらゆるレベルで交流を続け、双方が一つひとつ努力を重ねることで、日中関係の再構築につなげていきたい。
【春季労使交渉】
〔連合との懇談会(2月1日)を前に、埋めるべき「溝」や主張すべき点などについて問われ、〕連合との懇談会で伝えたいことは三つある。まずは、労使が同じベクトルを向いていることの確認、次に、賃金引上げのモメンタムの維持・強化に向けた、我々の昨年以上の熱意と決意である。最後に、「デフレからの完全脱却」と「構造的な賃金引上げ」の実現に向けたまさに正念場であり、是非一緒に成し遂げたいという思いである。
連合が方針として掲げている数値や表現の仕方などを見れば、運動論として違うところはあるものの、連合と経団連の間、労使間に埋めるべき「溝」があるとは認識していない。強いて言えば、経団連は「春季労使交渉」、連合は「春闘」と呼んでいる。「闘」という文字を使うことで意気が上がるというのであれば、「デフレ脱却」や「価格転嫁の進まない社会の変革」に向けて、この春に労使で共に「闘」いたい。
〔適正な価格転嫁を進めるにあたり、必要に応じて、消費者に無償提供しているサービスには適切な対価を求めることも考えられる、という趣旨の記載が「2024年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)にあることについて問われ、〕良いものや良いサービスには値が付くということを社会通念にしたいといった意図から盛り込んだ。消費者に値付けを受容してもらうためには、丁寧な説明を通じてサービスの良さを実感してもらうことが必要である。今年1回でできることではなく、地道に取り組む必要がある。
【金融政策】
〔日銀の金融政策の変更について問われ、〕コストプッシュ型ではなく、デマンドプル型の適度な物価上昇が実現し、賃金と物価の好循環がまわり始めたと確信できれば、金融政策を正常化したいと日銀は考えているのであろう。その時期は日銀が適切に判断することであるが、春季労使交渉の集中回答日(3月13日)が一つのポイントになる。物価上昇がコストプッシュによるものかデマンドプルによるものかを見極めるのは難しいが、サービス価格の緩やかな上昇が確認されるなか、日銀は、賃金と物価の好循環の実現に向けて少しずつ手応えを感じているのではないか。
【政治刷新本部】
〔自民党「政治刷新本部」による中間とりまとめ(1月25日)の受け止めを問われ、〕政治の安定と、国民からの信頼回復に向けて、自民党から一定の方向性が示されたことを評価する。今後、与野党で議論を重ね、改革の実効性を確保してほしい。
【豊田自動織機不正問題】
〔豊田自動織機が新たに産業車両用エンジン7機種および自動車用エンジン3機種で不正が判明したと発表(1月29日)したことについて問われ、〕日本企業の信用、信頼に関わる問題だ。日本企業は提供する製品の品質やサービスの丁寧さ、納期や法令の遵守といった点でも高い評価を得てきた。そうした信頼が揺らぐような不祥事が起こったことは誠に残念である。コーポレートガバナンスを形式で終わらせず、実効性を担保すべく内部統制を強化し、再発防止に努めてほしい。
【大阪・関西万博】
〔高市早苗経済安全保障担当大臣が能登半島地震からの復興を優先すべきとして岸田首相に万博の延期を進言したとされることについて問われ、〕能登半島地震からの復旧・復興に最優先で取り組み、被害に遭われた方々の日常生活を一日も早く取り戻さなければならない。復旧・復興の妨げにならない形で、万博も予定どおりの開催を目指す。
現在、万博の工事により被災地の復旧・復興に支障が生じる状況は確認していない。ただし、今後、影響が懸念される事態が生じるようなことがあれば、復旧・復興を最優先に考えて調整する必要があることは当然である。高市大臣はそのような思いで岸田首相に進言したのではないか。