一般社団法人 日本経済団体連合会
【G7広島サミット】
G7広島サミットを成功に導いた議長の岸田首相ならびに関係各位に敬意を表する。ゼレンスキー大統領の来日をはじめ、端々に外交の妙を感じさせるサミットであった。
首脳宣言において、力による一方的な現状変更を断固として拒否し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く意志を示したことは大きな成果である。ゼレンスキー大統領の対面参加は、G7首脳の結束の強化と、各国首脳のウクライナ情勢への理解増進の機会となった。また、G7とグローバル・サウスとの連携強化の確認がされたことを大いに歓迎する。さらには、被爆地の広島において、核兵器のない世界という理想に向けて現実的かつ実践的な取り組みを進めるべく、「広島ビジョン」が打ち出されたことは非常に意義深い。
〔経済安全保障分野の成果について問われ、〕G7の経済安全保障に関する取り組みは世界貿易機関(WTO)を中核とする多角的貿易体制の維持・改善に根差すものであることが確認された。経済活動は基本的に自由貿易を前提に行われるべきであり、現下の地政学リスクを踏まえれば、経済安全保障は必要だが、「スモールヤード・ハイフェンス」(限定された分野を厳重に管理)を原則とすべきである。その基本認識がG7でも確認されたことを高く評価したい。
〔カーボンニュートラル実現に向けて多様な道筋が認められたことの意義を問われ、〕カーボンニュートラルはG7だけで成しえない地球規模の課題である。グローバル・サウスを含めた各国が、個々の特性を活かして最適な方法で実現すべきであるという見解で一致したことは意義深い。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた責任の重さに変わりはなく、わが国も再生エネルギー導入の加速や原子力の一層の活用等を通じて確実に実現しなければならない。
【春季労使交渉】
〔2023年度春季労使交渉における大手企業の回答・妥結状況の第1回集計結果(5月19日公表)の受け止めを問われ、〕経団連は企業の社会的責務とまで申し上げ、物価上昇に負けない賃金引上げを呼びかけてきた。各企業がベースアップの目的や役割を再確認した結果、月例賃金の引上げ率は30年ぶりの非常に力強い数字(3.91%)となり、胸をなでおろしている。
最も重要なことは、来年以降も賃金引上げのモメンタムを継続し、構造的な賃金引上げを実現することである。そのためには中小企業への波及が不可欠であり、「パートナーシップ構築宣言」への参画企業の拡大等を通じた適正な価格転嫁により付加価値が増大し、賃金、物価も上がっていくというサイクル、いわゆる賃金と物価の好循環を実現する必要がある。
【日経平均株価】
〔日経平均株価が約30年ぶりの高水準で推移する現状への受け止めを問われ、〕日本経済が相対的に安定していると判断され、投機マネーが流入していることが現在の株高の原因であるとの見方もある。株価への評価は中長期の視点でなされるべきであり、一時的な変動に一喜一憂すべきではない。
【少子化対策】
少子化対策として実現すべき課題がいくつかある。1つは、希望する若い世代が結婚でき、子どもを持てるだけの所得水準を可能とする賃金引上げである。これに関しては、今年度の春季労使交渉で良いスタートが切れた。もう1つは、若い世代の将来への安心確保につながる全世代型社会保障改革である。「異次元」の少子化対策を掲げる政府には、中長期の視点に立ってやり遂げてもらいたい。
〔財源についての考えを問われ、〕繰り返し申し上げているとおり、少子化が日本社会全体の問題である以上、その対策に必要な財源は広く薄く社会全体で負担すべきである。さまざまな財源のベストミックスを図るべきではないか。