一般社団法人 日本経済団体連合会
【2023年春季労使交渉】
企業の社会的責務として、賃金引上げのモメンタムを維持・強化していくことを呼びかけている。足もとのコストプッシュ型の物価高を刺激に日本社会が目を覚まし、デマンドプル型のインフレ、そして「賃金と物価の好循環」につながっていく好機にしたい。また、適切な価格転嫁が日本のサプライチェーン全体で行われることで、中小企業にも賃金引上げのモメンタムが広がっていく。こうした動きを確たるものとするには、長年にわたり日本の経済社会に深く浸透してきたデフレマインドを払拭する必要がある。それは賃金引き上げだけでは達成できない。賃金引き上げによって消費が増えるよう、国民の安心の確保に向けて全世代型社会保障を構築しなければならない。
〔労使(連合と経団連)の基本スタンスが一致している背景について問われ、〕日本の経済社会は長きにわたって閉塞感に包まれている。この状況を打破するには、「人への投資」に重点を置き、それを起点に「賃金と物価の好循環」を実現することが不可欠である。今年は、こうした思いが労使双方に強いということだ。そうした共通認識に基づいた労使協調による取り組みは、経団連が目指す「未来を『協創』する労使関係」の表れと言える。
〔連合が5%の賃上げを要求していることについて問われ、〕昨年は4%の賃上げ要求方針であった。足もとの物価上昇を踏まえると、昨年より要求水準を引き上げたことは十分理解でき、驚きはない。
【第211回通常国会】
今国会にて岸田総理は、①グリーントランスフォーメーション(GX)、②安全保障、③少子高齢化といった、国の存立基盤に関わる大テーマに取り組まれようとしている。今年は日本の針路を決める正念場であり、活発な論戦を期待したい。
【成長志向型カーボンプライシング】
島国故に隣国とグリッド網で繋がれていないなどといった地理的制約を踏まえると、日本においてGXを進めるには、グリーンディール、イノベーティブな投資が不可欠である。10年間で20兆円規模のGX経済移行債の発行は政府が民間投資喚起の火付け役となることであり、企業の予見可能性の向上につながることから、評価している。他方、財政規律の維持もまた必須である。その一つのやり方として、カーボンプライシングによる中長期的な償還財源の確保が示されたものと理解している。
〔排出量取引制度と炭素賦課金についての受け止めを問われ、〕これらを組み合わせ、技術革新の状況を見ながら成長志向型のカーボンプライシングを考えていこうというものであり、公平・公正・透明性の確保が必要なのは言うまでもない。