一般社団法人 日本経済団体連合会
【2023年春季労使交渉】
春季労使交渉に臨むにあたり、かねて経団連は「賃金決定の大原則」(経済・景気・物価の動向等の外的要素と、自社の業績や労務構成の変化などの内的要素を総合的に勘案しながら、適切な総額人件費管理の下、自社の支払能力を踏まえ、労使協議を経て各企業が賃金を決定)に則った検討を呼びかけている。2023年春季労使交渉では、様々な考慮要素のうち、物価の動向を最も重視して検討すべきである。賃金引き上げのモメンタムを持続的なものとし、物価と賃金の好循環を実現したい。ベアを中心に、手当、賞与・一時金などを含めて賃金引き上げを会員企業に呼びかけるべく検討していく。働き手の約7割を雇用する中小企業に賃金引き上げのモメンタムが広がっていくように、パートナーシップ構築宣言を通じた取引価格の適正化などの取り組みを継続していく必要がある。
〔5%程度の賃上げを求める連合の方針案を問われ、〕足もとの物価上昇を見れば驚きはないが、高めのボールではある。各企業において、どの位が適切な賃金引き上げの水準であるか、労使で慎重に検討されるであろう。
【経験者採用】
新卒以外の採用で広く「中途採用」という呼称が用いられているが、「中途」という言葉に否定的なイメージがあることや通年採用を実施する企業が増えている実態を踏まえれば、「経験者採用」とする方がよいと考える。
【労働移動の促進】
グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によって産業構造を変革し日本経済を強靭なものとするためには、成長産業・分野への円滑な労働移動が不可欠である。そのために、働き手による主体的なキャリア形成・能力開発を後押しすべく、職業訓練やリスキリング、雇用のマッチング機能強化とセーフティーネットの整備など、官民挙げて働き手を強力に支援する必要がある。
【防衛費増の財源】
防衛は日本国民全員に関わるものあり、防衛費も国民全体で広く薄く負担するのが自然である。受益と負担をはじめ、様々な論点についてよく議論することが肝要である。今の段階で、特定の税項目だけに焦点を当てるような議論は好ましくない。
【走行距離課税】
〔政府税制調査会が自動車の走行距離に応じた課税も俎上に上げていることについて問われ、〕政府税調は中長期の税制のあり方を検討する場である。EVが普及する今後の社会変化を想定して、関連する税の最適な形を色々な角度から検討されているのだろう。そうした議論は大事であるが、現行の複雑な自動車関係諸税の簡素化などについての検討も不可欠である。