一般社団法人 日本経済団体連合会
【二拠点居住】
〔都市部と地方の二拠点居住を推し進めるための企業の取り組みについて問われ、〕多様でフレキシブルな働き方を推進することが重要である。経済成長一本鎗という時代ではもはやなく、日本人のウェルビーイング(幸せ)に対する考え方も変わりつつある。こうした中、多様な働き方を導入しようという機運が高まってきている。経団連調査(2022年10月)によると、回答企業のうち、従業員数5000人以上の企業の83.9%が副業・兼業を「認める」または「認める予定」と回答しており、その数は毎年着実に増えている。コロナ禍でテレワークも進んだ。地方に住みたいと思わせるような、人を惹きつける地域づくりを各地で進める必要がある。働き方改革と魅力的な地域づくりが相まって、二拠点居住が実現する。
【賃金引き上げ】
〔2023年春季労使交渉に向けて、連合が「5%程度」の賃上げ目標で調整していることの受け止めを問われ、〕連合の公表前であるため、正式なコメントは差し控えたい。ただ、物価が上昇していることから、昨年より高い数字が出てくることに驚きはない。足元の物価上昇が働き手の負担になっているのは事実であり、ベースアップ(ベア)や賃金引き上げの役割・機能を再認識する必要がある。
賃金引き上げにあたっては、個社の事情を踏まえ「賃金決定の大原則」に基づいて検討することは変わらない。そのプロセスにおいて、時々の状況によって重視すべき考慮要素は違ってくる。物価上昇が続く可能性が高い状況にあって、物価動向が一番重視すべき考慮要素であることを十分認識している。
【原子力政策】
日本のエネルギー政策を策定・遂行する上で、S+3E (Safety+Economic security、Economic efficiency、Environment) の観点は不可欠である。ロシアのウクライナ侵略によりエネルギー安全保障がクローズアップされている。外国からの電力融通が困難であり、かつ再生可能エネルギーの適地に恵まれていないという日本の地理的特性や、再生可能エネルギーは変動性電源であることを踏まえると、ベースロード電源として原子力を選択せざるを得ない。安全性の確保と国民の理解を得ることを前提に、原発の活用を促進していかなければならない。放射性廃棄物については、核燃料サイクル・最終処分の確立が不可欠である。将来的には、既存原発の運転期間を延長したとしても十分な電力供給が賄えなくなることから、核融合も含め、安全で、放射性廃棄物が少ない革新炉の開発・建設も、今から同時並行で進めていく必要がある。
【ナノテラス】
次世代放射光施設「ナノテラス」は、物質の反応プロセスを可視化できる素晴らしい施設である。世界中から研究者が集い、先端科学技術の拠点となり、起業が増えることも期待される。東北の新しい魅力を体現する場であるが、潜在力はそれにとどまらない。日本は断固たる決意で科学技術立国を目指している。ナノテラスがその一翼を担うことを期待している。