一般社団法人 日本経済団体連合会
【新型コロナウイルスへの対応】
この2年間、国、企業、個人は経験を積んできた。データも蓄積されつつある。ワクチンの接種が進み、日本でも接種率が8割近くに達した。非常に効果のある経口治療薬も開発された。こうしたことから、新型コロナウイルスは、パンデミックからエンデミックに移行しつつあると言えるのではないか。こうした中、ウイズコロナにおける社会経済活動維持の方策について、各所で議論がなされている。現在の2類相当のままとするか、インフルエンザ並みの5類にダウングレードするかという議論もある。今後、できるだけ5類に近づけていく方向で国は対応していくだろう。
【16都県へのまん延防止等重点措置適用】
大勢の人が集まり大きな声で話をすることが、新型コロナウイルスの感染急拡大の主因である、と尾身基本的対処方針分科会会長も指摘されている。そうした状況を回避する措置であるとすれば、致し方ないのではないか。政府には、影響を受ける飲食店等に対する、しかるべき支援策を講じていただきたい。
まん延防止等重点措置の期間中、オミクロン株の、感染してから他人にうつすまでの期間など、その特性についてデータが蓄積されていくであろう。科学的知見を踏まえ、同措置の早期解除が可能となれば、速やかに解除していただきたい。
ワクチン・検査パッケージの原則一時停止については、意図するところはわかる。中和抗体はワクチン接種後6カ月を過ぎると減退していくものであり、国民全員が6カ月前までにワクチン接種を終えることができるわけでもない。様々な事情をよく考慮して、同パッケージの活用を一律に停止するのではなく、もう少しきめ細かい対応をしていただけないかとも思えるが、難しい判断もあるだろうから、各自治体首長の判断が大事になってくる。
【資源価格の高騰】
足元で、コロナ禍における物流の停滞があり、それが原材料価格を押し上げている面もあるが、そうしたチョークポイントはいずれ解消する。カーボンニュートラルを見据えて、化石燃料の開発投資が抑制される中、コロナショックからの需要の回復があり、価格が高止まりしている。もう一つは、足元で産油国等での地政学リスクが従来以上に懸念されることから、当面、資源価格は高いままの可能性がある。
資源価格の高騰は、企業、とりわけ中小企業をコスト面で圧迫する。消費、物価、経済全体を視野に入れるならば、適切に価格で吸収することが肝要である。
【日銀の金融緩和策】
2%の物価安定の目標の実現を目指し、安定的に持続するために必要な時点まで大規模金融緩和を継続する、というのが日銀のスタンスである。(緩和の維持か終了かという)二者択一で語る時期ではない。
【春季労使交渉の意義】
春季労使交渉は賃金だけを議論する場ではない。企業経営と人の関わり方、人への投資、働き方など幅広いテーマについて、労使で課題を共有し、集中的に議論する場として意味がある。
〔現在の物価上昇が賃金引き上げに与える影響について問われ、〕適度なインフレの中、企業が業績を上げてその果実を賃金に反映させるというスパイラルがないと、物価上昇だけで消費が伸びないという事態を招いてしまう。それはわれわれの望むところではないし、日銀も同じ認識だと思う。
【経済安全保障】
現下の国際情勢を見るに、残念ながら、分断と対立が各地で続いている。こうした中、パンデミック対応などの課題解決にあたり、価値観を共有するlike-minded countriesで組む場面が出てきており、経済安全保障もそこに含まれている。
経済界としても、経済安全保障の必要性に全く異論はないが、一般論として、企業が自由主義経済の下、自由闊達に活動できることが大事である。
そこで、規制が設けられる際には、企業活動の手足を縛らず、ビジネスの予見可能性を担保していただくことが重要である。例えば、規制される機微技術について、できるだけ定義をしっかりとしてもらいたい。経済安全保障のあり方について、経済界は政府と一緒に、特許、機微技術など各論までよく議論してまいりたい。
【大阪・関西万博】
本日、大阪・関西万博の建設地である夢洲を視察した。2023年から本格的にパビリオンやテーマ館等の建設が始まる。今年は、その基本設計の重要な年である。
万博は東京オリンピック・パラリンピックに続く、国の大イベントである。「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマは、コロナ禍において生きる意味を改めて考えた、時宜を得たテーマであると思う。万博は、輝かしい日本を世界に発信するチャンスでもあり、官民を挙げて海外からの参加国誘致を進めるべきである。経団連は引き続き、招致活動ならびに機運醸成に積極的に貢献していく。
〔万博の資金集めについて問われ、〕経団連に割り当てられた資金を集めるべく努めており、それなりの手応えを感じている。他方、資材価格の高騰が建設コストに与える影響については精査が必要である。