一般社団法人 日本経済団体連合会
【米国による対中制裁関税の引き上げ】
トランプ米大統領は、301条関税に関心が集中しているようだ。米中貿易協議は山場を迎えつつあり、引き続き状況を注視していく。中国への制裁関税が10%から25%に引き上げられれば、その影響は大きいと思われる。中国への圧力として効果が大きいとの判断があるようだが、その影響は大きい。
米国の中国警戒論には幅がある。中国関係のビジネスに従事している立場からの意見がある一方で、安全保障の観点からは無視できないという人も多い。自由で開かれた貿易を支持する方針を鮮明に打ち出すなど、中国の姿勢は変化してきている。そのことが米国側にどれだけ伝わっているか気になるところである。
4月末に開催された一帯一路国際協力フォーラムにおいて、中国のトップリーダーの多くが、中国は自由で開かれた国際貿易を支持していると語り、一帯一路は覇権的な意図はないと再三表明した。しかし、言葉だけでは不信感を払拭することはできないかもしれない。引き続き米中の動向を注視したい。
米中貿易摩擦が起きて(2018年6月15日通商法301条に基づく追加関税賦課を決定、7月6日発動)一年が経過する。日本企業はこの間無防備でいた訳ではない。現実に、サプライチェーンの見直しも進んでいる。今後も情勢をよく見ながら対策を考えていかなければならない。
【日米貿易協定交渉】
日本は、為替は貿易不均衡とは別の問題として議論したいと考えているが、米国は一体的に議論することを望んでいる。米国側は、ライトハイザー通商代表以外の人の意見も聞こえてくるが、日本側は、関係閣僚が一枚岩で対応している。経済界も全米商工会議所はじめ様々なグループが意見を言っているが、経団連が有するチャンネルを通じてよくコミュニケーションをとることが大事だ。
【テロ対策施設の建設期限に関する原子力規制委員会の方針】
期限内(工事計画認可から5年間)に特定重大事故等対処施設の設置を求める方針は、従来からの原子力規制委員会の考え方に則った判断と受け止めている。現状、遅れが生じていることについてはそれぞれの事情があったものと考えるが、対応は各社の経営陣が判断することである。
【消費税率引き上げ】
今年10月の消費税率引き上げは法律で定められており、どのような事情があろうとも政府にはその通りに実行してほしい。多少の経済変動は起きるかもしれないが、適切に対処すればよい。
【終身雇用】
働き手の就労期間の延長が見込まれる中で、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている。外部環境の変化に伴い、就職した時点と同じ事業がずっと継続するとは考えにくい。働き手がこれまで従事していた仕事がなくなるという現実に直面している。そこで、経営層も従業員も、職種転換に取り組み、社内外での活躍の場を模索して就労の継続に努めている。利益が上がらない事業で無理に雇用維持することは、従業員にとっても不幸であり、早く踏ん切りをつけて、今とは違うビジネスに挑戦することが重要である。