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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 提言「日本を支える電力システムを再構築する」公表記者会見における中西会長発言要旨

2019年4月8日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【提言取りまとめの背景】

私は、会長就任以前から、日本のエネルギー、とりわけ電力問題をめぐって様々な課題があり、かつ問題意識を広く共有できていないとの危機感を持っていた。この問題に関し、今般、経団連としての意見を取りまとめたので、公表する。

【問題意識①:日本の電力システムの危機】

東日本大震災後の8年間の間に、世の中には大きな変化が生じてきた。

震災から8年が経った今でも、日本の電力の8割以上は化石燃料に由来している。国際社会からも、震災当時は「化石燃料依存が高まるのは仕方がない。頑張れ」と言われていたが、現在は、温暖化対策への取り組みが遅れていると見られてしまっている。

再生可能エネルギーの拡大に取り組み、ある程度の量を増やすことができたが、これ以上の拡大は難しい。現在の制度では国民負担の増加が問題となっているほか、再エネ大量導入時にも高品質な電力供給を維持するための仕組みが整備できていない。

原子力も、様々な事情があり、再稼働の見通しが立っていない。

これらの帰結として、電気料金は諸外国に比べて高い水準となっている。

このままでは、日本の電力システムにおいて、エネルギー政策の根幹であるS+3E(安全性+安定供給・経済効率性・環境性)が崩壊する懸念がある。

【問題意識②:電力投資の停滞】

特に訴えたいのは、電気事業への投資が停滞していることである。社会インフラの一部である電力は、需要が確実に存在する。それを背景に、これまでは、総括原価方式と地域独占のもと、計画的な投資が行われてきた。

しかし、電力システム改革によって、発電・送配電・小売の各事業が分離されようとしている。競争原理の導入によって低廉な価格での電力供給が実現すると期待されたが、発電は儲からず、送配電は投資をすると非難され、小売競争は期待されたほどの料金低下に繋がらない状況となっている。

システム改革自体を否定するつもりはないが、電力自由化の青写真が描かれた15年前とは、事業者の置かれる環境が大きく変わってしまった。電気事業者の立場に立って言えば、投資ができる環境でなくなっていることが問題である。リターンが得られるようにしていかなければならない。「電力システム改革のあり方を一緒に見直していこう」と呼びかけており、関係者と問題意識は共有できている。

【改革の方向性】

電力システムを、技術や環境の変化に対応させていく必要がある。

複数の可能性を想定した電力システム全体の将来像のもとで、再エネも原子力も、次のステップへ進める必要がある。これは企業だけでできることではなく、資源エネルギー庁にも対応をお願いしたい。再エネは、安定した電力供給を確保しつつ拡大していかなければならない。原子力も、投資回収ができなければ、経営判断として、事業から撤退することになる。安全性が確認された原子力発電所は、地元の理解を得て再稼働していくことが求められる。リプレース・新増設に向けた検討も必要である。日本の将来を考えれば、不稼働期間を運転年限から除外する、あるいは運転期間を60年超に延長するといった可能性について、技術的な検証を行う必要がある。

加えて、送配電網の次世代化が必要である。これまでは、大型電源の電気を電力ユーザーに届ける一方向の流れだけを考えればよかった。しかしこれからは、屋根置き太陽光などにより、自家消費が増え、ユーザー側からネットワーク側への電気の逆流まで発生するようになる。送配電網を流れる電気の動きが変わっていく。これに対応する設備投資ができなければ、再エネの拡大は不可能である。ビジネスモデルと電力システムの作り変えが必要である。

ファイナンスの仕組みも、ESG投資の拡大などに対応する必要がある。「経団連が政府に資金支援を求める」という報道もあったが、真意ではない。動いている巨大マーケットの仕組みを作り変え、投資の循環を生み出す必要がある。

【今後の対応】

電力は、インフラの計画~投資~実現のプロセスに大変な時間が掛かるため、今すぐ改革に取り組まなければならない。

電力は、議論の前提となる技術的特性も多く、広く理解を求めるのはなかなか難しい。しかし、最悪の場合、目先の安定供給が失われることもありうるという危機感を共有し、ぜひ関心を持っていただきたい。電力の一部分ではなく、「電力の全体像」を幅広く議論することが必要である。

経団連としては、政府審議会の場なども活用しつつ、関係者への働きかけを行い、政策を具体化していきたい。

以上

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