一般社団法人 日本経済団体連合会
【経済情勢】
景気については、足元の海外情勢の影響を受けて、減速が懸念されている。確かに、半導体材料、スマートフォン、自動車関連などが落ち込むなど、明るい材料ばかりではないが、これらが景気や日本経済全体に必ずしも大きな影響を及ぼすものではないと見ている。IoTやAIなどを中心に先を見通した投資活動は、衰えるよりもむしろ増えていると感じている。
【消費税率引上げ】
消費税率引上げに向けて、経済界として必要な対応をしっかりと行っていく。例えば、小売の現場では、複雑なポイント制に対する準備が必ずしも順調に整っているとは言えない状況にある。まだ半年の時間があることから、準備を進めていくことに尽きる。政府には、消費税率10%への引上げをしっかり行っていただきたい。
【電力政策】
電力自由化が、当初意図したような電気料金の低下につながっているとは必ずしも言えない。電力システム改革により、小売の自由化は実現したが、料金の低下よりも電力会社の投資の減少を招いてしまっている。電力自由化の下での諸政策のあり方についてもう一度考え直す必要がある。電力会社の発電状況を見ると、原発が止まり火力の比重が高まっている。不安定な再エネが増え、健全な市場構造にはなっていない。
【コンビニエンスストアの24時間営業の問題】
コンビニエンスストアは、地域によっては生活を支える重要なインフラになっていることから、世耕経済産業大臣から自主行動計画の策定の要請があったものと思う。24時間営業をめぐっては、24時間フルサービスを提供する場合のコストや人手不足の問題があり、顧客ニーズへの対応を踏まえながら業界が判断していくことと思う。
【プレミアムフライデー】
「週末はできるだけ早く帰宅しよう」という雰囲気は定着してきている。デジタルトランスフォーメーションが進む中、イノベーションの重要性が高まっていることから、働き方の質を変えていかなければならないという側面と、自由時間を確保するなど「一生懸命だけではイノベイティブになれない」という側面がある。後者について、プレミアムフライデーで盛り上げていくことは悪いことではない。継続的に取り組んでいくことが重要である。
【中小企業政策】
日本経済は大きな構造変化のさなかにある。デジタルトランスフォーメーションにより、今後は、大企業と中小企業、元請と下請といった産業構造から、企業間での情報共有が水平展開されるサプライチェーンに変わっていく。そうした中、特色があり、競争力のある中小企業がどう力を発揮していくかが、日本の産業構造を考えるうえで重要なポイントとなる。経団連への中小企業の入会は増えており、意見発信の際などに経団連のプラットフォームを有効活用してもらえればと考えている。経団連は日々、中小企業との対話に注力している。
【採用選考】
単なる新卒一括採用の日程に関する問題ではない。企業経営において最も重要なリソース、即ち「どのような人材を必要としているか」という問題である。イノベーションが求められる時代に、必要な人材をどう採用し、どうキャリアを形成していくのか。この方法論が大きく変わっていく時代背景の中で、大学教育、採用のあり方について前向きに議論したいというのが私の問題意識である。大学との間で既に議論をはじめているが、大学によって考え方は異なっており、さらに同じ大学の中でも学部により違っている。大きなコンセンサスづくりは、相当に難しい課題である。
多くの企業において、若い人に期待することは変わりつつある。これを受けて、採用のあり方がどうあるべきか、まさに議論の過程にある。「選考活動の日程が早まった」、「3、4月の内定率が高まった」という次元の問題ではない。
【Brexit】
事ここに至っても結論を出せないとなると、首相のリーダーシップが問われるのもやむを得ないし、政治的な混乱に結びつくリスクが出てきている。また、ポンドに対する信頼も懸念されるような状況になってきた。こうした状況下では、ノーディールを避けてほしいとただ要請するのではなく、現状を踏まえた対処を真剣に考えなくてはならない。大陸との取引が多い企業とそうでない企業とでは、対応には差があるだろう。