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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2017年11月8日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【企業行動憲章の改定】

企業行動憲章を7年振りに改定した。会員企業が遵守すべき企業行動の指針として企業行動憲章を1991年に制定して以来、経団連は経済社会の変化を踏まえ、数次にわたって憲章とその「実行の手引き」を見直してきた。今回の改定は、2010年の前回改定以来7年ぶりとなるが、この間国際社会では、「ビジネスと人権に関する指導原則」や「パリ協定」が採択されるなど、グローバルな諸課題の解決に向けた企業の貢献が一層重要となっている。また2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて、民間セクターは創造性とイノベーションの発揮が強く求められている。

そうした中、経団連では、革新技術を最大限活用し、人々の暮らしや社会全体を最適化した未来社会「Society 5.0」の実現を目指している。経済成長と社会的課題の解決が両立するこの未来社会の姿は、国連で掲げられたSDGsの理念とも軌を一にするものである。

そこで、経団連では「Society 5.0」の実現を通じたSDGsの達成を柱に、企業行動憲章を改定した。これまで同様、企業倫理や社会的責任には十分配慮しつつ、そうした次元を超えて、国際社会が抱える課題の解決や持続可能な社会の実現に向けて、企業が主導的な役割を果たしていくことを明示した。極めて重要な改定である。会員企業のトップには、本憲章の精神を率先垂範の上、社内やグループ企業への周知徹底をお願いしたい。

昨今、企業の不祥事が続いていることは大変残念である。ただ、あくまで各社の個々の事情によるものと受け止めており、日本企業全体の体質や倫理が問われるものではないと認識している。経団連では、会員企業が企業行動憲章に反し、社会からの信頼を失うような事態が発生したときには、経営トップが自ら率先して、原因究明、再発防止に努め、問題の解決を図ることとしている。今回の改定にあたっても、この精神は何ら揺らぐことなく、受け継がれている。経団連として、会員企業に罰則を科さないのかという質問に対しては、企業行動憲章は経営者に自らの責任で、原因究明、再発防止、顧客対応に努めることを求めるものである。企業の目的は利潤の追求であるが、そのためには何をしても良いということは決してない。法令を遵守し、社会的責任を果たすことは当然である。

【企業の事業主拠出金】

今回、人づくり革命の子ども・子育て支援の一環として、消費税率の引き上げと併せた待機児童対策の財源について、経済界にも負担してもらいたいとの要請があった。経済界は、これまでも事業主拠出金の増額による企業主導型保育事業で7万人分の受皿整備に協力してきた。国民全体が消費増税による追加的な負担をする以上、経済界としても消費税率の引き上げを前提とした応分の負担について知らないとは言えない。経済界の合意形成に向けて話を進めたい。事業主拠出金を充当する具体的な事業については、負担する企業が納得できる内容、また従業員の就業継続に資する内容となるよう、政府と調整していく。高等教育の無償化に向けた奨学金事業というのは、基本的には想定していない。また、中小企業への配慮は大事であり、この点も含めて、経済界の中でよく議論し、詰めていく。

経団連は3000億円という金額を容認したのかという質問については、安倍総理から3000億円という具体的な数字を示された。この要請を真摯に受け止めつつ、どの程度の規模であれば受け入れられるのか、現在、検討しているところであり、3000億円ありきということではない。

経済界への負担要請があったことについて、自民党内から批判的な発言が出ているとの質問があったが、今回の安倍総理からの要請は政府と与党が一体となって議論を進め、その上で経済界に負担の要請があったと受け止めている。その背景には、自民党若手議員の子ども・子育てに関する大胆な政策提言も一つのきっかけになっていると思っている。経済界としても応分の協力はしていきたい。

【経済情勢】

日本経済は緩やかな成長軌道にある。58カ月連続で景気拡大しており、GDPも6四半期連続で成長している。世界に目を転じても、米国経済は堅調であり、中国経済、欧州経済も順調に推移している。こうした中で、日本企業の業績は堅調に推移している。円安基調の中、特に輸出企業による牽引が大きいと見ている。

【法人税制】

法人実効税率について、経団連は一貫して、OECD諸国並の25%程度への引き下げを求めてきた。2年前の税制改正により、実効税率は35%から5%近く引き下げられ、20%台になったが、25%程度への引き下げを引き続き要望していく。ただし、実際の引き下げは、財源や優先順位などを総合的に勘案したうえで進めていく必要があり、今後、関係方面との対話を重ねていく。

【TPP】

先般、経済4団体で11カ国によるTPPの早期実現を求める提言を取りまとめ、安倍総理、茂木大臣に手交した。トランプ大統領が離脱を表明した以上、今は米国政府とTPPについて議論する時期ではないと見ている。米国が抜けたことで、TPPの経済的、地政学的なメリットは相対的に減じたが、それでもアジア太平洋地域において貿易・投資に関する広範かつ高水準のルールを作るという点で、TPPの意義は大きい。また、日本企業がグローバルにサプライチェーンを展開している中、11カ国共通のルールに基づいてビジネスができるメリットも大きい。米国が将来、復帰することを期待しつつ、まずはTPP11を早期に実現することが重要である。首席交渉官レベルで相当程度、議論が進展していると聞いており、ベトナムにおける首脳会合での基本合意を期待している。

【日中関係】

中国の新しい指導体制が発足し、習近平総書記・国家主席の強いリーダーシップの下で、安定的な政治基盤が構築されてからさほど日を置かず、11月20日より合同訪中団の最高顧問として北京を訪問する。今後の中国の経済運営や日中関係の展望について、国家指導者と直接、意見交換を行いたい。日中経済関係のさらなる発展は、安定した政治・外交関係の構築と相俟って、日中の戦略的互恵関係の強化につながるものであり、今回43回目となる訪中もその一助となろう。

一帯一路構想への協力のあり方について質問があったが、去る5月の一帯一路国際協力サミットフォーラムに二階幹事長とともに副団長として参加した。日本政府は、公正や自由、機会均等の原則といった価値観が担保されることを前提に、一帯一路構想に協力していく方針であると理解している。こうした基本的な方向性を踏まえ、今月の訪中団や来月の日中CEOサミットなどの場を通じて、同構想を巡り意見交換することになる。

以上

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