一般社団法人 日本経済団体連合会
【衆議院議員総選挙結果】
自民党・公明党の連立与党が過半数を大幅に超える議席を獲得したことにより、安定的な政権基盤が維持・強化されたことは、政策の継続的かつ着実な実行に資するものであり、経済界としては、この選挙結果を大いに歓迎したい。この選挙結果は、有権者が安倍政権のこれまでの実績を評価するとともに、アベノミクスの経済政策の加速、全世代型社会保障制度への転換、北朝鮮問題への対応といった安倍政権が掲げる政策を支持し、一層強力に進めてほしいという期待を示すものだと言える。
安倍政権には、選挙で示された国民の期待に応え、引き続き、内外の重要政策課題の解決に、強力なリーダーシップを発揮してもらいたい。経済界としても、安倍政権の政策遂行に引き続き協力するとともに、わが国経済の再生に向けて、自らの役割をしっかりと果たしていく。このため、これまで以上に政府・与党との政策対話を深めていく。本日夕刻にも、他の経済団体の長とともに、安倍総理を訪問し、来月のベトナムでのAPEC首脳会合で山場を迎えるTPP11が早期に実現するよう、経済界の強い期待を伝えたい。
また、安定した政権基盤が得られたことで、安倍政権には、国民の痛みを伴う改革にも取り組んでもらいたい。計画通りの消費増税の実行や社会保障制度の改革に思い切って、勇気を持って取り組むよう、政府与党の強力なリーダーシップを期待している。
【政策評価】
2017年版の「政治との連携強化に関する見解」ならびに「主要政党の政策評価」を取りまとめた。本年の政策評価の総評は、「自由民主党を中心とする与党は、デフレ脱却と経済再生、GDP600兆円経済の実現に向けて、Society 5.0の実現、働き方改革、経済連携協定やインフラシステム輸出を推進するとともに、安全保障体制の強化など、内政・外交両面において強力に政策を推進し、成果を上げており、高く評価できる。」とした。
毎年、この時期に政治寄付を呼び掛けており、本日付で会員企業・団体に「政治との連携強化に関する見解」ならびに「主要政党の政策評価」を送付する。民主政治を適切に維持していくためには、相応のコストが必要であり、企業の政治寄付は企業の社会貢献の一環として重要な意味を持つ。政策本位の政治の実現、議会制民主主義の健全な発展、政治資金の透明性の向上といった観点からは、クリーンな民間寄付の拡大を図ることが不可欠である。経団連は会員企業・団体に対して、政策評価を参考に自主的な判断にもとづいて、自由主義経済の下で企業の健全な発展を促進する政党、日本経済再生・日本再興を推進する政党への政治寄付を呼び掛けている。
政策を実行しているのは自民・公明の連立与党であり、野党は政策を実行する立場ではない。このため、政策評価における実績評価については与党のみとしている。経団連の事業方針に照らして、政府与党がどのような政策を実現しているのかについて、残された課題とともに示している。野党については、掲げる主要政策を列挙するに留めている。
【経済情勢】
日経平均株価が過去最長となる15営業日連続で上昇したことは、経済界としても好ましい状況であり、歓迎したい。この背景には日本の景気が全体として持ち直していることがある。輸出、生産、設備投資など経済指標は全般的に上昇基調にある。世界経済も上向いており、IMFは世界経済全体や各国・各地域のGDP成長率の見通しを上方修正している。また、米国で年末にも利上げが想定されている中、相対的に円安の傾向にあることも株価上昇の一つの要因であろう。
他方、いざなぎ越えの58カ月連続で景気が拡大しているものの、国民の間に景気回復の実感が伴っていないことも確かである。1970年代には賃金が年率で3割上昇することもあったが、今は違う。ただ、名目GDPは1992年から2012年までずっと500兆円前後で推移していたが、今は540兆円を超え、賃金もこの4年間、ベアも含めて毎年月額7000円程度、引上げられ、ボーナスも高い水準で推移している。いざなぎ景気ほどではないが、2012年以前に比べれば、経済指標や雇用環境は改善されていることは間違いない。
実感が伴わない最大の原因は消費がなかなか拡大しないことである。国民の将来への不安、子育て世代の教育費の負担などから、消費につながらず貯蓄に回ってしまっている。経済界は、継続的な賃上げにより、引き続き賃金引上げのモメンタムを継続していく。これに併せて、社会保障制度改革を通じて、国民の将来不安が払拭されていけば、消費が拡大し、景気回復の実感もより身近に感じられるようになると思う。
日銀の金融政策については、今は出口戦略を議論する段階ではなく、デフレ脱却に向けた金融政策を推進することが最大の課題であると認識している。
【東北復興】
経団連は東日本大震災からの復興を重要政策課題の一つと位置づけており、11月にも「東北復興応援フェスタ」を開催する。これは、東北産品の消費拡大と東北観光の拡大を目指したキャンペーンであり、経団連会員企業も参画し、マルシェをはじめ約30のイベントが実施される。関係方面と連携し、震災復興の加速にしっかり取り組んでいく。
【プレミアムフライデー】
日程について、月初の方が良いという意見もあったが、サービス供給側からすれば、月末の給料日の後の方が消費の活性化につながるため、日程は変更せず、引き続き月末に実施することにした。ただし、月末金曜日に固定せず、個人や会社の状況に応じて柔軟に運用することで、より多くの人にプレミアムフライデーを過ごしてもらおうという方向性も併せて示された。さらなる推進に向けて、まずは継続していくことが何より重要である。また、政府予算も措置してもらいたい。経済界としても、消費喚起と働き方改革というプレミアムフライデーの二つの趣旨を踏まえ、従業員が参加しやすい環境を整備していきたい。
【日米関係】
10月29日より訪米ミッションを派遣する。オハイオ州、ワシントンDCでの要人との懇談の場などを通じて、日本の経済界が投資、雇用、輸出、研究開発などを通じて、米国の経済社会の発展に貢献している実態について、きちんと発信していきたい。1980年代の摩擦の時代を経て、日米は相互信頼に基づく良好な関係を構築している。これをさらに発展させることは双方の利益となる。経団連は、2015年から3年連続して全米各地に経済ミッションを派遣し、訪れた州の数は14州に及ぶ。今回のミッションではオハイオ州を訪問するが、同州にはカリフォルニア州に次ぐ約900社もの日系企業が事業を展開している。ケーシック知事との懇談では、円滑な事業環境の整備に向けて協力を要請したい。
【憲法改正】
今回の選挙の結果、衆議院では、与党が3分の2を占め、憲法改正に前向きな勢力を合わせれば8割程度を占めることになった。憲法には、時代に即したあり方が求められ、各界各層で議論を深めることが重要である。安倍総理も憲法改正について、スケジュールありきではなく、議論をしっかり進めると発言している。経済界としては、改憲論議も重要であるが、経済最優先の政権運営を基本姿勢として堅持してほしい。
【企業不祥事】
神戸製鋼、日産自動車を巡る問題は非常に残念である。日本の製造業、メードインジャパンへの国際社会からの信認を毀損しかねない事態である。両社には、早急な原因究明、再発防止、顧客対応をお願いしたい。
日本のものづくり産業の強みは、高い品質とコストをはじめとする総合的なサービスであり、十分に強みを有している。このことをしっかり発信していきたい。