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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 四国地域経済懇談会後の共同記者会見における榊原会長発言要旨

2016年12月7日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【アベノミクスの評価と課題】

安倍政権が発足して間もなく4年が経過するが、この間、大きな経済効果が見られている。2016年7-9月期の名目GDPは、2012年10‐12月期に比べて約33兆円増大した。同様に、設備投資は約4兆円、雇用者報酬は約16兆円増加した。また、国の一般会計税収は約14兆円増加する見込みである。雇用環境においても、完全失業率も2012年12月の4.3%から3.0%へと下がり、有効求人倍率も0.83倍から1.40倍へと大きく改善している。このようにアベノミクスは積極的に評価できるものである。

こうした経済効果は、もともとの3本の矢のうち、財政政策と金融政策によるところが大きく、今後は消費や設備投資を上向かせていくためにも、成長戦略をしっかり実行していくことが課題となる。具体的には、日本再興戦略に盛り込まれた官民戦略プロジェクト10を官民が連携して推進していくことに尽きる。特に、その第一であるSociety 5.0が成長戦略の柱となり、この推進に向けた体制が整備されつつある。経団連としてもSociety 5.0実現部会を発足させるとともに、政府の未来投資会議に私と中西副会長が参画している。

また、官民戦略プロジェクトの第10として、官民連携による消費喚起策の実施が掲げられており、来年2月よりプレミアム・フライデーを開始する。これは毎月第4金曜日に食事や買い物、旅行などを通じてプレミアムな消費を行ってもらおうというものである。経団連では、生活サービス委員会を中心に経済産業省とも連携して検討を進めており、第4金曜日には半日休暇を取得して、家族と一緒に食事や旅行を楽しめるよう、会員企業へも呼びかけを行っていく。

【働き方改革】

政府の働き方改革実現会議の最大のテーマは長時間労働の是正と同一労働同一賃金の実現であり、年度末の取りまとめに向けて議論が行われている。長時間労働是正に向けては36協定の見直しが大きなテーマとなっており、官民が一体的に検討を進めている。経団連でも、今年度を「働き方・休み方改革集中取り組み年」と定め、特に長時間労働是正に向けた取り組みを展開している。経営トップ自ら先頭に立って、管理職を含むすべての従業員の過重労働防止対策に取り組むことが重要である。

また、先日、会員企業に対して過重労働防止の徹底を要請した。具体的には、(1)経営トップ自らが長時間労働の撲滅に向け社内の意識改革を図ること、(2)労働時間の適正な把握など労働法令が遵守されているかどうか常時点検を行うこと、(3)管理職は部下とのコミュニケーションを密にして適宜負荷軽減や業務支援に努めることの3点である。長時間労働による従業員の自殺という悲惨な事件が二度と起きないよう、経営トップへ呼びかけを行った。同様にハラスメント防止にも経営トップ自らが取り組むことが重要である。来年1月に公表する経営労働政策特別委員会報告の中にも、過重労働防止に向けた明確な考えを示し、経営トップへの働きかけを強めていく。

【配偶者控除の見直し】

配偶者控除の見直しについては、現在の103万円から150万円へと引き上げられ、これに合わせて年収制限が課されることになった。いわゆる、「103万円の壁」が就労調整につながっていたが、これが緩和されることで、女性の就労参画が拡大されることを期待したい。配偶者手当についても、「103万円の壁」に合わせて制度設計している企業が多いため、就労調整の一つの要因と指摘されており、これを見直すことは必要である。現在、経労委の中でも議論しており、女性の就労促進につながるよう、方向性としては、配偶者手当から子育て世帯の支援につながる手当へと転換することが考えられるだろう。配偶者控除・手当を見直すだけで、就労調整が完全に解消されることはないが、今回、「103万円の壁」が150万円へと緩和されることで、状況がいくらか是正されることは間違いない。

【四国新幹線】

四国は日本で唯一、新幹線の具体的な計画がない空白地帯となっているが、沿線の人口、文化資産、観光資産を踏まえれば、四国だけないというのもおかしい状況である。まずは経済効果、費用対効果をしっかり示し、四国だけでなく全国規模で新幹線整備への賛同を得ていくことが重要である。四国の経済界が中心となって、来年度予算への整備計画向けの調査費計上を要請しており、まずはこれを実現することで、四国新幹線を検討の俎上へと乗せていくことが必要である。

【日米経済関係】

日本企業8000社が米国に展開して積極的な事業活動を行っており、170万人の雇用を生みだし、40兆円を超える投資を行なうなど、米国経済へ大きく貢献している。トランプ次期大統領がこれからどのような政策を打ち出すのか、よく見極める必要があるが、これまでのところ大幅減税や規制緩和、インフラ投資を打ち出しており、経済活性化に向けた期待感が示されている。新政権のもとでビジネス環境が改善されていけば、日本企業の事業意欲が増し、米国への投資が拡大し、ひいては日米経済関係の強化につながるものと期待している。

【通商政策】

経団連はかねてより日EU EPAの実現を推進してきた。これが年内の大筋合意に向けて進んでいることを大変心強く思っている。他方、TPPもアジア太平洋地域の安定につながる重要な成長戦略の柱である。これが当初の計画通りに実現するよう、まずはその第一歩として我が国が今国会で承認することが重要である。トランプ次期大統領はTPPからの撤退を表明するなど、難しい状況にあるが、諦めることなく、粘り強く取り組み、米国の姿勢が変わるよう促していくことが重要である。

以上

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