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会長コメント/スピーチ  記者会見における会長発言 記者会見における榊原会長発言要旨

2016年11月22日
一般社団法人 日本経済団体連合会

【TPP】

TPPはアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠であり、日本にとっても、米国にとっても極めて重要な経済的枠組みでもある。このTPPの重要性をトランプ次期大統領に理解していただき、TPPを支持してもらえるよう、政府には様々な形で努力してほしい。経済界としても関係方面に働きかけていく。

TPPはわが国の成長戦略の中核であり、所期の計画通りにTPPを実現することが大事である。先日もリマAPECの機会にTPP参加国の首脳会合が開催され、各国とも国内手続きを粛々と進め、米国に議会承認を促していくことで一致した。米国を除く11カ国が協力して、米国の批准を働きかけていくことが最優先課題である。

安倍総理も米国抜きのTPPは意味がないと発言しているが、まったく同じ考えである。TPP署名国のGDPの約6割を米国が占めており、この最大の経済大国が入らなければ、TPPの意義が失われる。また、日本は米国を除く多くのTPP加盟国とは二国間協定を締結しており、この観点からも米国抜きのTPPは効果が限定的となる。米国が入っていることに意味があり、日本としては米国も含む12カ国でのTPP成立を目指して全力を尽くすべきである。

トランプ次期大統領は二国間協定を進める考えを示したが、複数国間の交渉で得られる結果と二国間の交渉で得られる結果はおのずと違ってくる。TPPの場合は関税だけでなく、知的財産権や政府調達など広範な分野にわたり、質の高い包括的な協定となっている。こうした多国間協定には計り知れぬ価値があり、二国間協定では実現できないものである。

これまで通り、TPPをまず実現し、日中韓FTA、RCEPへとつなげ、最終的にはFTAAPを目指すという大きな構想を推進していくべきである。この構想を進める契機となるTPPは絶対に必要である。

【春季労使交渉】

先日の働き方改革実現会議において、安倍総理より来年の春季労使交渉に際して、賃金引上げに向けた要請があった。具体的には、(1)少なくとも前年水準の賃金引上げと四年連続のベアの実施、(2)期待物価上昇率を勘案した議論などである。私からは、経済の好循環を引き続き回していくためには、賃金引上げのモメンタムを維持していく必要があり、具体的な対応についてはきちんと議論したうえで、年明けにも「2017年度版経営労働政策特別委員会報告」において、経済界のスタンスを明確にすると回答した。

今年の企業業績は、上期においては増益と減益で半々ぐらいであったと思う。為替水準に加えて、新興国経済の若干の停滞も相俟って、輸出企業を中心に減益となった。下期に向けては、各企業とも持ち直しの動きが出てきており、通期では増益の企業も増えると見ている。また、業績を単年度ではなく、3~4年ぐらいの期間で見れば、企業収益は停滞しておらず、基調としては好調に推移していると思う。他方、ベアについては、今のような経営環境ではできる企業とできない企業が出てくる。特にベアは、一度実施すれば、様々な形で経営に長期的に影響することから、手当やボーナスなど業績反映型の処遇改善を重視したい企業が多い。こうした状況を踏まえれば、ベアを含めた年収ベースでの賃金引上げを目指すことになるだろう。

経済界は過去3年間、ベアを実施してきた。しかし、その前は5年以上、ベアが実施されない状況が続いていた。企業はここ数年、踏み込んだ対応をしてきたと思う。経済の好循環を回していくという社会的要請がある中、今年、企業がどこまで踏み込めるのかについては一律ではなく、できるところはベアを実施することになるだろう。ただ、ベアだけでなく、全体的に処遇を改善していくことこそ重要である。手当や賞与、労働条件など全体的な処遇改善を図り、消費喚起につなげていきたい。

なお、わが国では、物価について期待物価上昇率ではなく、実績値をベースに労使交渉を行ってきた。安倍総理、黒田日銀総裁から期待物価上昇率を勘案してほしいとの要請があったことについては、きちんと会員企業に伝える必要があるが、期待物価上昇率をベースにした交渉のあり方については、議論を続け、経労委報告にて経済界としての考えを示したい。

【消費喚起策】

今週末から米国で始まるブラックフライデーは、ナショナルキャンペーンとして大きな成果をあげている。経団連としては、生活サービス委員会で具体的な消費喚起策の検討を進めてきたが、2月の最終金曜日よりプレミアムフライデーと称するキャンペーンを開始したいと考えている。毎月最終金曜日をプレミアムフライデーとして、全国的な消費拡大を目指していく。消費者の将来不安や保守的・防衛的な消費行動を転換し、明るい雰囲気を作り出すような運動を展開していきたい。会員企業にも、月末の金曜日は遅くとも午後3時ぐらいには退社して、社員が映画鑑賞や外食、泊りがけの旅行など特別な時間を過ごしてもらえるよう呼びかけていく。国も巻き込みながら、プレミアムフライデーを消費拡大につながるような大きな行事にしていきたい。

【外国人材の受入促進】

人口減少が進むなか、経済・社会の活力を維持・強化するためには、外国人材の受け入れは不可欠である。高度人材は勿論、特定の産業においても人材は不足している。こうした中、経団連はイノベーションや競争力強化につながる高度人材や、産業・インフラ、介護に必要な人材の受入れ、そのための規制改革の推進に関する提言を行った。移民については、棚上げすることなく、将来の検討課題としている。移民を巡る国民的な議論は未成熟であるが、タブー化することなく検討していく必要がある。

【訪米ミッション】

11月末からワシントンDCへミッションを派遣し、政治家、有識者、CSISなどのシンクタンクと意見交換を行い、トランプ新政権下の米国の政治、経済、外交等の政策をしっかり把握したい。共和党政権は8年ぶりとなるが、トランプ新政権の関係者との人脈形成に努力するとともに、TPPの意義や重要性についても、日本の経済界の立場から発信していく。

【日ロ関係】

リマAPECの機会をとらえ通算15回目となる安倍総理とプーチン大統領の首脳会談が開催された。日ロ関係改善に向けた努力に敬意を表したい。5月のソチでの首脳会談では、課題解決に向けた道筋が見えてきたとされたが、今回の総理の言葉にもあるように大きな一歩を進めるのは簡単ではないということだろう。ただ、両首脳間の信頼関係が醸成され、交渉の場が整えられており、経済界としても、8項目からなる経済協力プランの実現はじめ様々な形で応援していく。8項目の経済協力プランの進捗状況を確認し、来月のプーチン大統領の訪日に向けてさらに詰めていくことになる。日ロ間での平和条約の締結は70年間実現しなかった重要事であり、そう簡単に実現できるものではない。成果を着実に積み上げていき、来月の首脳会談で新たな大きな一歩が踏み出せることを期待している。

以上

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