一般社団法人 日本経済団体連合会
【北海道経済】
北海道経済は、個人消費が持ち直し、生産も活発化している。雇用も引き続き人手不足が続くなど、改善している。全体としては緩やかに回復の方向に進んでいる。実際、北海道ではインバウンドの急増、北海道新幹線の開通、農産物の輸出拡大など明るい兆しが出始めている。一方、人口減少という大きな課題にも直面している。現在、約550万人の人口はこのまま何もしなければ2040年には419万人にまで減少するとの試算が示されている。これに対し、北海道では様々な施策を講じることで、450~460万人を維持する方針であり、心強く感じている。
北海道経済の成長を促していくためには、強い基幹産業である観光や農業を戦略的に拡大し、一層強化していくことが重要である。観光については、インバウンドを2015年の208万人から2020年には500万人へと拡大することを掲げ、北海道新幹線の活用をはじめ戦略も策定されている。農業については、すでに大規模で専業的な農業経営が展開されているだけでなく、食の輸出拡大戦略として、2014年から2018年にかけて、農産品・食品の輸出額を663億円から1000億円へ拡大することが掲げられている。こうした戦略を着実に進めていくことが重要である。とりわけ、農業の競争力強化に向けて、まずは高付加価値品で海外市場に切り込んでいくことが必要であり、現在、臨時国会で審議中のTPPが成立すれば、これを活用して輸出を促進していくことが肝要である。経団連としても、農業界との連携強化に向けたプラットフォームを整備しており、農業者が企業のノウハウを活用することで、農業の競争力強化につなげていきたい。加えて、企業が経営に参画できる規制改革や食クラスター活動に代表される6次産業化なども農業の競争力強化には不可欠である。
また、観光と農業に加えて新たな産業の集積に取り組むことも必要である。すでに水素関連産業の集積と航空宇宙産業の誘致に向けて、様々な活動が展開されている。こうした活動を計画的に進めていくことで、持続的な経済成長につながると思う。
【道内空港の民間委託】
7空港の一括民間委託に際しては、メリットとデメリットの両方があるが、メリットを評価したい。新千歳空港への一極集中になっている現状を踏まえれば、7空港を一括的に運営することで、道全体の活性化につながる。
留意点としては、空港ごとに求められる機能強化の方向性が異なることを踏まえる必要がある。望ましい民間委託スキームについてよく議論して、事業者が創意工夫を発揮し、利用者の利便性向上が図られるようにしなければならない。また、空港を整備さえすればインバウンドが増えるということはなく、空港運営を含めた環境整備にも併せて取り組まなければならない。例えば、バスや鉄道などの二次交通の整備、道路標識の外国語表示、ホテルやガイドの充実、wi-fiの整備であり、特にwi-fiの整備はインバウンド増加の必須条件である。全体的な環境整備を進めていくとともに、民間委託により7空港が一体的に運営されれば、さらなる観光産業の活性化が期待される。
【水素社会の形成】
水素社会は、日本の経済社会が目指すべき一つの方向性であることは間違いない。ただ、経済性や安全性などの課題も残されている。水素が国の基幹エネルギーとして定着するためには、さらなる技術開発や制度等の環境整備が必要である。
特に都市部では、水素自動車の普及はCO2削減につながる。欧州ではドイツを中心に水素社会の構築を目指し、すでに多くの水素ステーションが整備され、都市部でのCO2削減に貢献している。今は欧州が先行しているが、日本でも福岡などの地域で水素社会形成に向けた取り組みが進められており、今のところ大きな問題もなく運営されている。北海道についても、地域としてのポテンシャル含め可能性を有しており、水素社会推進に向けた環境は整っている。コスト、制度面での環境整備、安全性等の課題の解決と併せて進めていく必要がある。
【日ロ関係】
北海道とロシアの間ではすでに地道な経済協力が進められている。例えば、ウラジオストク等の寒冷地での野菜生産に向けて、温室技術の供与などの協力が進められている。こうした地道な経済協力は、ロシアでも評価されていると聞く。
日本とロシアの間には平和条約が締結されておらず、これを締結し領土問題の解決を図ることが大きな課題となっている。昨今、安倍総理とプーチン大統領の間で課題解決に向けた気運が醸成されつつあることは誠に喜ばしい。12月のプーチン大統領の訪日に当たっては、こうした課題が前に進むことを期待している。
経済界としても、安倍総理が今年5月の首脳会談で提案した8項目の協力プランをしっかり受け止めて、実現に取り組んでいる。10月3日には、経団連 日ロ経済委員会と露日ビジネスカウンシルの間で今後の協力拡充に関する覚書を交わした。こうした経済界の包括的な枠組みと北海道が進める地道な経済協力とが相俟って、両国間の信頼関係が深まれば、領土問題の解決にもつながることが期待される。