一般社団法人 日本経済団体連合会
【G7伊勢志摩サミット】
4月に開催したB7東京サミットにおいて先進主要国の経済界は、世界経済が先行き不透明になる中、G7が世界経済の持続的で安定的な経済成長の牽引役を担っていくべきであるとの認識を共有した。また、B7の総意として、金融政策だけでなく、機動的な財政政策を実施し、大胆な構造改革を断行するべきであるとの見解を盛り込んだ共同提言を安倍総理に手交した。安倍総理は連休中に訪欧し、各国首脳と会談を行い、金融政策、財政政策、構造改革について、それぞれの国の事情を反映しながら、バランスよく協力を進めていくことで基本的な合意を得た。先週末のG7財務相・中銀総裁会議でも同様の方向性が打ち出されている。各国間で政策スタンスを巡り若干の相違があるようだが、G7伊勢志摩サミットでは、安倍総理のリーダーシップにより、参加国が一致した方向性の政策が打ち出されることを期待している。
【消費増税】
2年前の5%から8%への消費税率引き上げ以来、消費は駆け込み需要に伴う反動減などもあって落ち込んだまま、底這いの状況が続いている。消費税率の引き上げは、消費を活性化し景気を牽引していく観点からは、重い材料になる。一方、社会に冠たるわが国の社会保障制度を次の世代に引き継いでいくこと、プライマリーバランスの黒字化を達成することも国の重要課題である。経済界は一貫して、消費増税による経済への影響を最小化するよう、消費テコ入れ策の実施など環境を整えたうえで、予定通り10%に引き上げるべきだと主張している。ただ、最終的には安倍総理が様々な要素を勘案したうえで、高度な政治判断によって決められることである。
【経済成長戦略】
先日、取りまとめられた日本再興戦略2016の素案は、GDP600兆円経済の実現に向けた大きな一歩になるものである。成長戦略実行に向けた具体的施策も盛り込まれており、これを実行すること、そのための予算を確保することが重要である。
新たに官民共同で推進する10のプロジェクトが盛り込まれ、広範囲にわたる画期的なプロジェクトが示された。経済界から提言した内容が迅速に反映されており、高く評価したい。これらをしっかり実行していくことが、2020年におけるGDP600兆円経済の実現に向けた推進力になると思う。とりわけ、第4次産業革命の推進が重要である。30兆円規模の市場創設が期待されるプロジェクトであり、官民一体で強力に進めていく必要がある。経済界としても政府の取り組みに全面的に協力し、進めていきたい。
中長期的に、民主導の経済成長を実現していくためには、事業環境の整備が不可欠である。現在、70兆円規模の設備投資を80兆円へと引き上げていくためには、法人税改革、研究開発促進税制、電力コストの低減などに取り組み、国際的な事業環境のイコールフッティングを確保しなければならない。これが企業活動の活性化に向けた鍵である。また、規制改革についても、確かに進捗はあるものの、まだまだ多くのビジネスを阻害する規制が残っており、抜本的な規制の改革を進めていくべきある。法人税改革やTPPなどのいくつかの前進は見られるが、引き続きこうした課題を解決していくことができれば、経済は目に見える形で良くなっていく。経済界としても、政府与党との政策対話を通じて、政策の実行を働きかけていく。日本経済のファンダメンタルズは弱くない。事業環境の整備を地道に進めていけば、経済は必ず活性化する。
【財政出動】
1-3月期のGDP速報値は年率換算でプラス1.7%、消費もプラスになるなど明るい材料もあったがまだまだ力強さに欠けている。前回の消費増税の際、数兆円規模の財政出動を行ったものの、結果としては十分ではなかった。消費を刺激し、消費主導の経済成長を推進していくためには、きちんと需要を創り出すことが重要である。消費増税を巡る政治判断に関わらず、需要喚起に向けて、小出しではなく思い切った規模の財政出動が必要だと考えている。
【採用選考活動】
今年度のスケジュールにおいては、3月に広報活動が6月に選考活動(試験・面接)がそれぞれ開始される。新スケジュールは大学、政府とも調整のうえ、学業への影響や活動の長期化による弊害を軽減するために策定されたものである。関係者にとってよくなるよう変更したのであり、その効果が出てきているとも聞いている。今まさに採用選考活動が行われているところであり、注意深く見守っていきたい。昨年に比べて広報活動の期間は短くなったが、全体的には学生にとってマイナスにはなっていない。新たなスケジュールに基づく採用選考活動について、企業、大学など関係方面に十分にヒアリングやアンケート調査を行ったうえで、変更の影響をしっかり把握したいと思っている。