一般社団法人 日本経済団体連合会
【経済情勢】
日本経済について、4-6月期の実質GDP成長率2次速報値は年率換算で1.2%のマイナスとなった。7-9月期には回復するとも言われているが、マイナスとなる可能性もある。消費が停滞し、輸出も伸び悩んでいることに加え、中国をはじめとする新興国経済への懸念もあり、先行きが不安視されている。こうした中、日銀短観でも業況判断指数(DI)が少し悪化している。日本経済は基調としては緩やかに回復しているものの、そのスピードは少し弱くなってきており、政策対応が必要である。
北海道経済については、経済に占める消費の割合が大きい中で、観光客のインバウンドの増加もあって個人消費が伸びている。設備投資や生産も上向いており、明るい材料が出てきている。
基幹産業である観光については、インバウンドが30カ月連続で前年を上回っているほか、来年3月には北海道新幹線が開業する。こうした好機を活かして、観光産業のさらなる発展に取り組むことが重要である。同じく基幹産業である食産業・農業についても、北海道農業には平均耕作面積の広さなど様々な特徴がある。北海道経済連合会、JA北海道中央会、北海道庁の連携のもと、食の総合産業化に向けた取り組みがすでに展開されているほか、国際戦略総合特区のもとでICTを活用した次世代施設園芸にも積極的に取り組んでいる。これらの取り組みを強化することにより、北海道経済が発展することを期待している。
【TPP】
TPPは日本の経済成長の要となる。経済社会全体が裨益する制度インフラである。先のアトランタでの閣僚会合で大筋合意に至ったことを大いに歓迎している。
TPPは21世紀型の画期的な経済連携協定である。参加国はアジア太平洋の12か国であり、合わせると人口で世界の11%、GDPで世界の36%を占める。また、これまでにない高いレベルの自由化を実現するものだ。非関税分野(投資、競争政策、知的財産等)や新しい分野(環境、労働等)についても共通ルールを定めている。さらには、成長著しいアジア太平洋地域において共通ルールが定められ、高度なバリューチェーンの構築につながる。地政学的な観点からも重要な枠組みとなる。参加国が、民主政治、法の支配といった基本的な価値観を共有していることから、TPPはアジア太平洋地域の成長、繁栄、安定に資する存在となる。
今後、政府には、日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉を加速するとともに、2020年までにアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を実現してもらいたい。併せて、日EU EPAについて年度内の妥結を目指してほしい。
農業などへの懸念が指摘されている。一時的には打撃を受けるかもしれないが、TPPは農産品・加工品の輸出拡大にもつながるものであり、プラスの側面を評価するべきである。政府はすでにTPP対策本部を設置しており、必要に応じて国内措置を設けるとともに、農業の基盤強化と成長産業化に向けた構造改革を推進することが重要である。具体的には、企業の農業への参入促進、農地集積・大規模化、6次産業化、輸出促進などである。
わが国農業はTPPの有無に関わらず、構造改革が急務である。TPPを機に成長産業化を一段と進めるべきである。意欲ある農業者・農業法人の取り組みを政策面で後押しすることが重要であり、経団連としても農業界との連携をこれまで以上に強化していく。
【アベノミクス第2ステージ】
アベノミクスの新しい3本の矢は、安倍総理の経済最優先という基本姿勢とそれに向けた意気込みを表すものであり、大いに期待している。今後は具体的な政策に落とし込み、政策を着実に実行していくことが重要であり、経団連からも具体的な政策提言を行っていく。例えば、法人実効税率の20%台への引下げ、さらなる規制緩和、消費刺激策、研究開発の促進などを求めたい。
秋以降、官民での対話が始まると聞いているが、賃金、設備投資、働き方、子育て世帯への支援などの重要テーマについてしっかり議論したい。政府との連携を強化して、経済の好循環を生み出していく。
【第3次安倍改造内閣発足】
主要閣僚、党幹部が留任しており、政策の継続性が重視されている。第2ステージに入ったアベノミクスを推進するのに相応しい強力な布陣だと思う。日本経済は基調的には緩やかに回復しているものの、足下、先行きへの懸念も出てきている。経済再生を確実に実現するため、アベノミクス新3本の矢を中心とする政策を最優先で実行してもらいたい。