日本経済団体連合会 会長 十倉 雅和
日本商工会議所 会頭 小林 健
経済同友会 代表幹事 新浪 剛史
わが国経済は、円安やコスト増を背景とした物価上昇や人手不足等の課題に直面しているが、企業の設備投資等は堅調に推移し、「物価と賃金の好循環」による成長型経済へと移行してきている。構造的な賃上げや投資拡大を実行していく主体は、我々民間、経済界である。地域経済の好循環には、全従業員数の約7割(三大都市圏を除くと約9割)を雇用する中小企業が「自己変革」を通じた生産性向上の果実を賃金に繋げるとともに、適正な価格転嫁を通じて賃上げ原資を安定的に確保できるかが鍵となる。
昨年1月、経済3団体は、「パートナーシップ構築宣言」の推進に向けて、2年連続で共同要請を発出し、宣言企業数は5割以上増加しているが、昨年の中小企業庁調査ではコスト転嫁率は約50%と、価格転嫁は「道半ば」にある。今回、サプライチェーンが複層構造を成す中、下流に位置する中小事業者には、コスト転嫁の恩恵が十分に届いていない状況が明らかになった。サプライチェーン全体を強靭化し、付加価値を拡大するためには、日本の強みである大企業と中小企業の共存共栄関係の再構築が不可欠である。
中小企業における構造的な賃上げと、国民が豊かさを実感できる好循環の実現に向け、付加価値の拡大とその適正な分配が不可欠である。そのためには、BtoB取引での「パートナーシップ構築宣言」の実効性確保に加えて、BtoC取引では、消費者に対して『良いモノやサービスには値が付く』という価値観を浸透させ、デフレマインドを払拭し、価格転嫁を社会全体で受け入れる商習慣の確立に向けて、官民挙げて推進していくことが急務である。
本年も経済3団体として、会員企業、特にサプライチェーン上位に位置する大企業、中堅企業、発注者でもある中小企業等に対して、「パートナーシップ構築宣言」の趣旨の徹底と実行を強力に進めるとともに、未宣言企業に対して宣言への参画を呼びかける。
1.経営者自らが先頭に立った、取引適正化への取組み強化
- 経営者自らが先頭に立ち、「パートナーシップ構築宣言」について、積極的に宣言・公表を行うとともに、実行とフォローのための社内体制を明確に示し、取引適正化の徹底を図る。
- 下請法改正等に伴い、「パートナーシップ構築宣言」の内容を不断に見直すとともに、直接の取引先を通じて、その先の取引先へ働きかけることで、宣言の実効性確保と社会全体への浸透を図る。
- 発注者及び受注者は、内閣官房と公正取引委員会による「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に示された12の行動指針(別添参照)に沿う行為を徹底するとともに、経営トップが社内外に方針を示す。
2.労務費、エネルギーコスト、原材料費の価格転嫁の推進
- 発注者及び受注者は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の価格交渉様式例(別添参照)を活用し、最低賃金上昇率、春季労使交渉の妥結額・上昇率等の公表資料を基に価格交渉を行い、下請法対象取引のみならずサプライチェーン全体で労務費、エネルギーコスト、原材料費の価格転嫁を推進する。
- 発注者であるサプライチェーン上位に位置する大企業等は、受注者の要請に真摯に向き合うとともに、受注者においても価格交渉力を高め、臆することなく価格交渉を申し入れるなど、価格転嫁を商習慣としていくことに努める。
3.「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値の向上
- サプライチェーン全体での付加価値の向上を図るとともに、規模や系列・業種・地域を超えたパートナー企業との連携を促進し、発注者及び受注者双方の付加価値の拡大を目指す。
- 人手不足が深刻化する中、デジタル化や省力化など、中小企業単体では対応が困難な課題解決にサプライチェーン全体で積極的に挑戦する。業種・業界・サプライチェーンの課題を適切に把握するとともに、業界内で依るべき優良な取引慣行について体系的な改善サイクルを確立する。
- 「価格転嫁の商習慣」の定着による社会全体の付加価値向上を図るため、政府においては、最終消費者である国民に対し、「良いモノやサービスには値が付く」ことの理解深化に向けて、メディア等を活用した啓発を行う。