1. トップ
  2. Policy(提言・報告書)
  3. 税、会計、経済法制、金融制度
  4. 金融商品取引法施行令等改正案(スタートアップへの資金供給の促進関係)に対する意見

Policy(提言・報告書)  税、会計、経済法制、金融制度 金融商品取引法施行令等改正案(スタートアップへの資金供給の促進関係)に対する意見

2024年12月25
一般社団法人 日本経済団体連合会
経済基盤本部

金融商品取引法施行令等改正案(スタートアップへの資金供給の促進関係)に関する意見募集の対象のうち、特に株式報酬に係る開示規制の見直しについて強く支持する。本改正によって、株式報酬に係る情報開示の負担が大幅に軽減され、株式報酬制度の活用が一層拡大すると期待される。

その上で、解釈の明確化を図る観点から、下記の意見を提出する。

本意見書で用いる用語は、別段の記載のない限り、以下のとおりとする。

  • 金商法:金融商品取引法
  • 金商法施行令:金融商品取引法施行令(改正後)
  • 開示府令:企業内容等の開示に関する内閣府令(改正後)
  • 財務諸表等規則:財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則
  • 開示ガイドライン:企業内容等開示ガイドライン(改正後)
  • 臨報特例:有価証券届出書の提出に代えて、臨時報告書の提出をもって募集又は売出しを行うことができる特例制度(金商法第4条第1項第1号、金商法施行令第2条の12第1号)

1.臨報特例における譲渡制限期間の見直し

  • 金商法施行令第2条の12第1号「半期報告書(……)が提出されるまで」との文言について、対象となる株券等には、半期報告書の提出以降も譲渡制限を付すことが認められるか。

  • 社内規程や割当契約等において、特定の有期の譲渡制限期間を定めていなくとも金商法施行令第2条の12第1号の譲渡制限の要件を満たすという理解でよいか。例えば、譲渡制限期間としては「取締役等の退任・退職日に譲渡制限を解除する」旨を規定して特定の有期の譲渡制限期間を定めないものの、早期に(金商法施行令第2条の12第1号に定める有価証券報告書又は半期報告書が提出されるまでの間に)退任・退職した場合には、開示ガイドライン4-2-2に掲げる場合(正当な理由による退任・退職の場合等)を除き、全て無償取得されることが社内規程や割当契約等において明記されている場合には、金商法施行令第2条の12第1号の譲渡制限の要件を満たしていると解釈してよいか。

  • 社内規程や割当契約等において、有価証券報告書(又は半期報告書)を提出することが見込まれる日あるいは有価証券報告書等の法令上の提出期限日より後の日を終期とする、特定の有期の譲渡制限期間を定めている場合には、金商法施行令第2条の12第1号の譲渡制限の要件を満たしていると解釈してよいか。

  • 臨報特例による場合には、金商法第4条第1項本文の適用を受けないので、届出前勧誘禁止規制(金商法第15条第1項)が適用されず、また、効力発生までの待期期間(金商法第8条第1項参照)もないとの理解でよいか。

  • 臨報特例による場合には、臨時報告書を提出した後に、半期報告書や自己株券買付状況報告書などを提出しても、訂正臨時報告書の提出は不要であるとの理解でよいか。

2.臨報特例が適用される対象者の範囲の拡大

  • 開示府令第2条第1項・第3項における「子会社」は、開示府令第1条第27号の定義に基づく(財務諸表等規則第8条第3項に規定する子会社(同条第7項の規定により子会社に該当しないものと推定される特別目的会社を除く。)を指す)との理解でよいか。

3.事後交付型株式報酬への臨報特例の適用の明確化

(1)「取締役等」の定義

  • 事後交付型株式報酬の場合、発行会社等の取締役等が実際に株券等の交付を受ける時点(発行会社が株式の発行又は自己株式の処分を行う時点)までに、取締役等を退任又は退職していることもあるが、金商法施行令第2条の12第1号でいう「取締役等」には、退任又は退職している場合も含まれるか。

  • 金商法施行令第2条の12第1号でいう「交付日」において「取締役等」であった者は、株券等の交付を受ける前に死亡した場合やその他の正当な理由により退任又は退職し、退任又は退職後に実際の株券等の交付を受けることとなったとしても、開示ガイドライン4-2-2(1)に従い、引き続き金商法施行令第2条の12第1号の臨時報告書特例の適用対象であり、当該退任又は退職した者に対して実際に株券等を交付する時点(発行会社が株式の発行又は自己株式の処分を行う時点)で有価証券届出書又は有価証券通知書の提出は不要との理解でよいか。

  • 臨報特例により臨時報告書を提出し、「当該会社及び当該子会社の取締役等」である者に対していわゆるユニットを付与した後、当該取締役等が関連会社(財務諸表等規則第8条第5項)に異動となり、当該関連会社等に所属することとなった後に取締役等に対して株券を交付する場合であっても、訂正報告書の提出は不要であるとの理解でよいか。

(2)いわゆる「ユニット」の位置付け

  • 開示ガイドライン4-2-1について、事後交付型の譲渡制限付株式ユニットは金商法第2条第1項17号に掲げる有価証券のうち株券の性質を有するものに該当するか。

  • 金商法施行令第2条の12第1号で、譲渡制限の対象は「株券等」とされているが、事後交付型株式における譲渡制限の対象は「株券等」ではなくいわゆる「ユニット」と理解してよいか。

  • 開示ガイドライン4-2-1について、事後交付型株式報酬において臨報特例を利用する場合には、ユニット付与の時点を株券の交付日として取り扱うこととされている。この場合、臨時報告書の提出が求められるのは、ユニット付与の時点か、それとも募集株式の発行等に係る取締役会等の決議の時点か、明確にされたい。

(3)通知の方法及び内容

  • 開示ガイドライン4-2-1において、「発行会社……が、発行会社……の取締役等……に対し所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせること」が、金商法施行令2条の12第1号の「取得勧誘又は売付け勧誘等に該当し得る」と示されているが、具体的にはどのような行為がこれに該当すると考えられるか。例えば、事後交付型株式報酬を導入済みで、株式報酬規程等に基づき、株式数の算定方法等を定めている企業において、取締役会等の機関で当該規程等に基づく事後交付型株式報酬の付与を決定するような行為は、これに該当すると考えられるか。

  • いわゆる事後交付型株式の場合、開示ガイドライン4-2-1の「確定した数」とは、業績達成度合いによって交付数が変動する業績連動の仕組みのケースも対象として想定されているのか。また、業績連動の事後交付型株式報酬では、報酬対象期間の開始時点において株式数が確定していないが、取締役等に、確定した株式数ではなく、将来交付する株式数の算定方法、及び算定基準となるユニット数を通知した日を「交付日」と扱うことでよいか。

  • 開示ガイドライン4-2-1の「通知その他の方法」とは、会社の報酬規程等の社内規程に役位別の交付数や算定方法が定められているものの、個別の取締役等への通知行為が行われない場合は、該当しないと考えてよいか。例えば、社内規程の内容どおりの報酬制度を今年も適用すると取締役会等で決定するだけでも「通知その他の方法」に該当するか。

  • いわゆる事後交付型株式の場合、開示ガイドライン4-2-1でいう「所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせること」を取締役会等で決定した場合、株券等の発行価額又は売出価額の総額が1億円以上であれば、当該決定が開示府令第19条第2項第2号の2柱書でいう「取締役会の決議等若しくは株主総会の決議又はこれらに類する決定」に該当し、臨時報告書の提出は当該決定時点で行うことになるか。

  • 会社が一般的な株式報酬規程を設けている場合において、取締役等が「当該定めの内容を知ることとなる日」(開示ガイドライン4-2-1)は、「取締役等が報酬制度の対象者となる旨を知った(通知を受けた)日」と「取締役等が自身に適用されるユニット数(業績連動の場合は、業績評価前の基準となるユニット数)を知った日」のいずれを基準に考えるべきか。

  • 業績連動の事後交付型株式報酬の場合、業績達成度合いによって、最終的な発行数や発行価額等の総額が変動することになる。開示ガイドライン24の5-14-5の「当初見込まれた発行価額又は売出価額の総額」は、業績達成度合いが最も高い場合(発行数や発行価額等の総額が最多になる場合)を想定して計算することになるか。

(4)信託・持株会を用いる場合の取り扱い

  • 事後交付型株式報酬で「信託を用いる場合」も臨報特例の対象となり得ることを開示ガイドラインで明示すべきである。

  • 株式交付信託において、信託が株式を市場で買付け、発行会社又はその子会社の取締役等に交付する場合は、「勧誘」に該当せず、臨時報告書又は有価証券届出書の提出は不要であるとの理解でよいか。そうであれば、その旨を開示ガイドラインで明示すべきである。

  • 持株会型ESOP(あらかじめ信託等が発行会社の株式を取得し、運営期間中において継続的に、信託等が発行会社の従業員持株会に株式を売却する仕組み)において、信託等が株式を市場で買付け、将来の一定の時期に発行会社又はその子会社の従業員にその受益権を付与する場合は、「勧誘」に該当しないと理解してよいか。

  • 持株会型ESOPにおいて、発行会社から信託等に対し募集株式の発行が行われる場合、発行会社又はその子会社の従業員にその受益権を付与するまでに所定の期間が設定されていれば、開示府令第19条第2項第2号の2イ(7)及び開示ガイドライン4-2-1の解釈が適用されるとの理解でよいか。

(5)1億円基準の判定

  • 開示ガイドライン24の5-14-5について、業績連動の事後交付型株式報酬の場合、設計と業績達成見込みに応じて、ユニット付与時点では発行価額の総額が1億円未満であったものの、業績達成見込みが高まることによって1億円以上になることが考えられる。その場合は1億円以上が見込まれた時点で臨時報告書を提出することでよいか。一方、臨時報告書の提出後に、発行価額の総額が1億円未満となることが見込まれる場合には、当該臨時報告書の取り下げが必要であるとの理解でよいか。

  • 開示ガイドライン24の5-14-5について、事後交付型株式報酬では、付与されたユニット数に応じて、最終的に株式と金銭が支給される設計がある。この場合、金銭支給分も含めて発行価額又は売出価額の総額が1億円以上となることが見込まれるかを判別するとの理解でよいか。

  • 開示ガイドライン24の5-14-5に「時価の騰貴等によって発行価額又は売出価額の総額が1億円以上となることが見込まれることとなった場合は、そのときから遅滞なく、臨時報告書を提出する必要がある」とあるが、これは取得勧誘を行う機関決定から、実際に取得勧誘がなされるまでの期間に限られるか。

(6)その他

  • 改正前に事後交付型株式報酬の付与を目的として発行登録書を提出している場合も、開示ガイドラインに基づき、株式交付時に発行登録追補書類の提出は必要とならないとの理解でよいか。また、発行登録追補書類の提出が必要となる場合であっても、発行登録追補書類の提出に代えて、新規で付与する別の事後交付型株式報酬のために提出する臨時報告書に、改正前に付与した事後交付型株式報酬に関する記載を追加して提出することで、既存の発行登録書を取り下げ、発行登録追補書類の提出を不要にすることも可能であるとの理解でよいか。

  • 開示ガイドライン24の5-14-4について、臨時報告書に記載された発行数等よりも実際の発行数等が減る場合や、付与対象者の人数の増減がある場合には、訂正報告書の提出は不要であるとの理解でよいか。

4.臨時報告書の記載内容の見直し

  • 開示府令第19条第2項第2号の2柱書において、「又はこれらに類する決定」が追加されているが、これは具体的にどのようなケースを想定しているのか。

  • 開示府令第19条第2項第2号の2(7)において「信託を用いて当該株券等を交付する場合((8)に規定する場合を除く。)」、同号(8)において「持株会契約(……)に基づき当該株券等を交付する場合」の開示内容が追加されている。それぞれ(ii)として、交付する予定の当該株券等の総数又は総額の記載が求められている。これについて、以下の2点を確認したい。

    • (a) 市場売却等によって換価してから取締役等に金銭を支給する分も合計して算出する必要があるか。

    • (b) 信託又は持株会が、臨時報告書の対象となる新株発行又は自己株式処分の方法による株券等の取得と、市場からの株券等の取得の両方を同時に行う場合、臨時報告書に記載する交付予定の株券等の総数又は総額はどのように記載すればよいか。信託又は持株会が市場から株券等を取得し、その後に取締役等に当該株券等を交付する場合は臨時報告書の提出を要しないと理解しているが、市場から取得した分も考慮して算出すべきか。

  • 開示府令第19条第2項第2号の2(7)・(8)で追加される、取締役等に株式報酬を付与するために利用される信託(信託受託者)や持株会に対する割当は、文言上は「第三者割当」(開示府令第19条第2項第1号ヲ)に該当するように思われるが、「第三者割当」の定義は今回の改正で特に変更はないとの理解でよいか。

  • 開示府令第2条第2号の2イ(8)(i)「当該持株会契約の内容(信託を用いて当該株券等を交付するときは、当該信託の受益権の内容を含む。)」について、具体的な記載事項を開示ガイドライン等で明らかにすべきである。

  • 開示府令第2条第2号の2イ(8)(iii)「当該持株会契約に基づき当該株券等を交付することができる者の範囲」とは、持株会契約で定める範囲か、臨時報告書の対象とする株式発行で対象とする範囲か。持株会を通じて譲渡制限付株式を割り当てる場合、必ずしも持株会契約で定める範囲すべてに割り当てず、範囲を限定するケースが考えられる。また、当該譲渡制限付株式の割当てを機会に、持株会会員の範囲を拡大するケースも考えられる。

  • 発行会社が持株会に募集株式の発行を行うとき、当該定義された持株会契約に付随する細則に、譲渡制限付株式を付与するための条件及び手続きに関する内容を記載する場合、当該細則も開示府令第2条第2号の2イ(8)本文の「持株会契約」に含まれるとの理解でよいか。

  • 開示府令第2条第2号の2イ(8)(i)「当該持株会契約の内容」とすると通常の持株会の規約のすべてを記載することとなる。他方、同号イ(7)(i)では「信託の受益権の内容」とされており、信託契約の内容をすべて記載することとはされていない。双方の整合性を確保すべきである。

以上

「税、会計、経済法制、金融制度」はこちら