メルコスールは、人口約3億人、GDP3兆ドルに迫る一大経済圏である。日本とメルコスールは、日系人コミュニティも礎に、長年にわたり、政治、経済、文化、人材等の様々な分野で交流を深め緊密な協力関係を築いてきた。経済面では、日本はメルコスールに、自動車、機械、電気機器など多くの工業製品を輸出するとともに、日系企業が約1,000の拠点を構え、雇用創出や輸出拡大を通じて、長年、現地の経済社会の発展に貢献してきた。また、日本はメルコスールから、経済活動や国民生活に不可欠な鉄鉱石、リチウム等の鉱物資源並びにトウモロコシ、大豆等の飼料・食料を輸入している。このように日本とメルコスールは、相互補完的な関係にあり、また、戦略的にも極めて重要な経済パートナーである。加えて、メルコスールは再生可能エネルギー生産が盛んで、その拡大の更なるポテンシャルに富むとともに、デジタル化に対する意識が高く、その導入が進んだ地域であり、これら分野での日本との協業可能性も高い地域である。
こうした経済関係を一段と高いレベルに引き上げ、将来に向けて日本とメルコスールがともに経済社会の発展を続けていくためには、両者間に存在するビジネス上の諸課題を解決するとともに、人、モノ、カネ、サービス、データの自由な流通を促進することが不可欠である。そのための制度的基盤として、我々は、日本メルコスールEPAの早期実現を強く訴えてきた。メルコスールは、域外の各国・地域とEPAを通じて経済関係を一層強化しようとしており、アジア地域の経済大国である日本との間でも経済関係を一層緊密化することが重要である。
日本メルコスールEPAが双方にもたらす恩恵は極めて大きい。日本にとっては、鉱物資源および飼料・食料のより安定的な確保が期待できる。他方、メルコスール諸国にとっては、一次産品等の日本市場へのアクセスがより容易になるだけでなく、日本を起点にアジア市場への展開の可能性が開ける。また、ビジネス環境の改善および貿易投資関係の深化・拡大は、人の交流のさらなる活性化ならびに日本とメルコスール双方の産業の一層の発展と協力の原動力となり得るものである。
ここに我々は、日本メルコスールEPAの早期実現に向けて、各国首脳の強力なリーダーシップの発揮を求めるものである。