
谷崎氏
経団連は3月5日、東京・大手町の経団連会館で東亜経済人会議日本委員会(飯島彰己委員長)を開催した。日本台湾交流協会の谷崎泰明理事長から、最近の台湾情勢と日台関係について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 台湾の内政
台湾では2024年1月の総統選挙で与党・民進党が勝利し、5月に頼清徳新政権が発足した。頼総統の支持率は、50%前後で安定して推移している。ただし、台湾の議会は野党(国民党など)が与党(民進党)を1議席上回る「ねじれ」状態で、どちらも過半数に達していない状況である。
そうしたなか、野党は、総統の国会出席義務付けなどを内容とする「国会改革関連法」や、防衛費、外交予算など過去最大の削減額となる25年度予算案などでの強行採決を続けるなど、与野党間の対立は激化している。第3党の民衆党がキャスティングボートを握っているが、同党の柯文哲前主席の汚職容疑などにより支持率は大幅に下落している。
■ 両岸関係の動向
頼政権発足以後も、両岸の没交渉状態は続いている。中国はさまざまな分野で台湾に圧力をかけている。例えば、軍事面では、台湾周辺で演習が実施され、また経済面では、海峡両岸経済協力枠組取決め(ECFA)に基づく関税引き下げ措置が停止された。一方で、中国・福建省住民の馬祖や金門島への旅行が解禁されるなど、硬軟織り交ぜた対応が取られている。
政治大学選挙研究センターの意識調査によると、台湾住民の6割が「台湾人」としてのアイデンティティを強く意識しており、特に20年の香港情勢の影響が指摘される。また、台湾の独立については、6割が現状維持を望んでいる。
■ 台湾経済の現状と国際関係
台湾経済は24年のGDP成長率が約4.3%(概算値)となるなど好調である。一方で、近時、香港・マカオを含めた対中国輸出依存度は減少傾向が続いている。
台湾の対外関係は、16年の蔡英文前総統の政権発足以降、10カ国が断交した。現在の国交国は12カ国であるが、米中関係の緊張を背景に外交関係のない国との交流が増加している。
米国との関係では、トランプ大統領が防衛費や半導体産業などを巡って厳しい姿勢を示すなかで、台湾側は対米投資の拡大、相互理解に向けたコミュニケーションの強化などの意向を示している。
日本との関係は、全般的に極めて良好である。24年8月に石破茂衆議院議員、野田佳彦衆議院議員がそれぞれ訪台するなどハイレベルの交流が実施されている。
経済面でも24年12月、台湾積体電路製造(TSMC)熊本第1工場が量産を開始しており、25年には第2工場の建設開始が見込まれる。また、24年には台湾からの訪日観光客が過去最多の約604万人を記録するとともに、訪台日本人数もコロナ禍後初めて100万人を突破した。
台北駐日経済文化代表処の世論調査によると、台湾から日本、そして日本から台湾への好感度は非常に高く、相思相愛の状況といえる。
【国際協力本部】