
森氏
経団連は2月18日、東京・大手町の経団連会館で幹事会を開催した。外務省の森健良顧問が「トランプ2.0」と題して講演した。概要は次のとおり。
米国では1月、第2次トランプ政権が発足した。この政権といかに向き合うかが、今後の国際社会と、わが国の外交にとって大きなテーマとなる。
米国内では、インフレの是正などが課題となるなか、トランプ大統領が掲げる高率の関税措置などの各種政策は、かえってインフレを助長し得るものも見受けられるなど、政策的な成果を上げていくことは容易ではないと考えられる。他方、「各国に盗まれた製造業を関税によって取り戻す」といった主張は、トランプ政権の支持者の共感を得るうえで重要なメッセージでもあり、こうした旗は簡単には降ろさないことが想定される。
トランプ政権の動向が国際秩序に与える影響も、見通しにくい状況にある。この点、政権内には、(1)不介入主義(2)MAGA(Make America Great Again)ナショナリズム(3)レーガン的国際主義――といった大きく三つの思想派閥があるとみられる。対中国政策、ロシアによるウクライナ侵略、中東の問題など、難しい国際情勢へどのような形で対応していくのか、先行きは不透明である。足元では、ロシア・ウクライナ間の戦争への対応が、今後の国際秩序に対するスタンスの試金石となり得る。
国際社会においては、「法の支配」の弱体化が進み、「共通の価値観」が失われつつあるが、トランプ政権・共和党の主張のなかには、今までの価値観の延長にはなくとも、合理的といえるものもある。今後、トランプ政権の主張が、国際社会において従来とは異なる新しい秩序の創造へとつながることとなるのか、注視することが求められる。
翻ってわが国も、こうした複雑な情勢を踏まえ、今後の外交のあり方を模索していく必要がある。時代は「転換点」を過ぎ、すでに「転換している」という認識に立ち、想定外の問題に直面することも覚悟しておくべきである。
こうしたなかで行われた、石破茂内閣総理大臣とトランプ大統領との日米首脳会談(2月7日)は、大成功を収めたといえる。とりわけ、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなかで、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントが確認できたことは高く評価できる。
さまざまな意見もあるが、現時点で予見し得る将来において、日米同盟に代わる選択肢はない。複雑化する国際情勢のなかで、日本は「依存する同盟国」から「強い同盟国」へと進んでいくことが大切である。
【総務本部】