
あいさつする十倉会長
経団連と中国経済連合会(中国経連、芦谷茂会長)は2月27日、広島市内で「第52回中国地方経済懇談会」を開催した。経団連からは十倉雅和会長、副会長らが、中国経連からは芦谷会長をはじめ164人が参加し、「知恵と情熱で拓く地域の未来~魅力溢れる中国地方の創生に向けて」を基本テーマに意見交換した。
また、経済懇談会に先立ち開催した昼食懇談会では、広島大学の越智光夫学長から、人材育成、イノベーション、地域経済活性化に関する取り組みについて説明を聴くとともに、中国経連首脳を交えて意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで中国経連の芦谷会長は、中国地域は、エネルギー多消費産業のカーボンニュートラル(CN)化や、全国を上回るペースで進展する人口減少などの中長期的課題を抱えていると言及。そのうえで、これらの課題を克服し、地方創生を実現するためには、「知恵と情熱」を持って、地方自らが未来を切り拓いていくことが重要であると述べた。
続いて十倉会長があいさつ。2024年12月に取りまとめた、日本の未来社会の姿を描く「FUTURE DESIGN 2040」(FD2040)を紹介。わが国が避けては通れないパスウエイである「科学技術立国」と「貿易・投資立国」の基盤となるのは公正・公平で持続可能な社会であり、その実現には「成長と分配の好循環」が欠かせないと述べた。また、25年4月に開幕する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の成功に向けて、皆で盛り上げていきたいとの決意を述べた。
■ テーマ1「挑戦と変革による次世代の産業づくり」
まず、グリーントランスフォーメーション(GX)の推進、デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進、スタートアップの育成・創出に関して、中国経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)データセンターの立地や電化の拡大などにより、わが国の電力需要が大幅に増える見通しであり、脱炭素電源のさらなる活用が欠かせない。その主力となるのは再生可能エネルギーと原子力である(兵頭誠之副会長)
- (2)各企業が持つデータのうち、協調できるデータを積極的に共有・連携することで、新たな価値を創造していくことが重要。また、業務のデジタル化に当たり、まずは徹底して業務の省力化を行うべき(東原敏昭副会長)
- (3)大学等の優れた研究成果を発掘し、社会実装へとつなげるためには、外部からの能動的なシーズ発掘が不可欠。そのためには、大学、スタートアップ、産業界の間で、人材の往来を増やすことが有効である(亀澤宏規副会長)
――との発言があった。
■ テーマ2「連携と適応による持続可能な地域づくり」
次に、インバウンド拡大や観光産業の高付加価値化、農業活性化、デジタル共通基盤の実装促進、人材確保に関して、中国経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)地域経済社会の活性化には、観光・農業・エネルギーなどの地域資源を生かした産業の発展や、デジタル共通基盤の整備などによる行政DXの推進が重要である。また、大阪・関西万博の全国的な機運醸成への協力をお願いする(永井浩二副会長)
- (2)観光は地方創生の重要な柱であり、「地域資源を生かした新たな観光コンテンツの展開」「ワーケーションなどを通じた関係人口の創出」「高度観光人材の育成」などに取り組むことが求められる(野田由美子副会長)
- (3)地域経済活性化には、都市部から地方部への人の流れの創出を通じた人材確保が不可欠。人材の受け入れ側である地方部の企業には、通年採用や経験者採用の導入・拡大、柔軟な働き方などの環境整備が求められる(筒井義信副会長)
――との発言があった。
最後に永野毅副会長があいさつ。地域活性化には、各地域が主体性を最大限発揮できるようにすることが大事。人口減少が進むなかでは、できるだけ広域で物事を考えて地域課題を解決していくことも重要。石破茂内閣総理大臣が掲げる「楽しい地方」の実現に向けて、各地域の主体的な取り組みが全国で進展していくことを期待していると総括した。
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サクラオブルワリーアンドディスティラリー
一行は翌28日、広島県廿日市市のサクラオブルワリーアンドディスティラリーを視察。ウイスキーやジンの製造工程を見学し、地域資源を活用した取り組みについて理解を深めた。
【総務本部】