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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年3月6日 No.3764 提言「2040年を見据えた教育改革」を公表

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経団連は2月18日、提言「2040年を見据えた教育改革~個の主体性を活かし持続可能な未来を築く」を公表した。わが国では、急激な人口減少・少子高齢化による労働力不足や、地方経済の衰退、デジタル技術の進歩、グローバル競争力の低下といった大きな環境変化が起こっている。加えて、教育格差の拡大も喫緊の課題となっている。こうした環境変化に対応できる教育改革を実現すべく、提言を取りまとめた。概要は次のとおり。

■ わが国の課題と目指す姿

18歳人口は35年以降急激に減少し、40年には、22年比で30%減少する見通しである。また、AI技術等の進展に伴って社会が必要とする職種や能力が変化しているものの、日本は高いスキルを持つ雇用者の増加率で欧米に劣っている。人口構成や社会のニーズの変化を踏まえた、国民全体の能力向上が急がれる。

そこで同提言では、「最先端技術立国」「無形資産立国」「貿易・投資立国」――の三つをわが国が目指す姿として掲げ、次の四つの柱で改革の方向性を示した。

■ 経済界が求める教育改革の方向性

一つ目は、初等中等教育の改革である。自ら課題を見つけ、解決策を導き出し新たな価値を創造する人材の育成に向けて、一律一斉型の教育から、多様性・好奇心・探究力を中心に個を磨き育む教育に転換する必要がある。学校教育では、個々の興味・関心や学習進度を踏まえた個別最適な学びを提供するために、教員が教育指導に集中できる環境の整備や、企業等で多様な経験を持つ人材の学校現場への参画が不可欠である。また、基礎学力に加えて好奇心や探究力を総合的に評価する入試への改革や、専門高校等における産業人材の育成とその魅力の向上も大切である。

二つ目は、高等教育機関の競争力強化、規模の適正化と基盤の強化である。急激な少子化により入学倍率や定員充足率の低下が加速するなかにあっては、大学間の連携・統廃合の促進と「出口の質保証」の強化が急務である。また、各地域において、複数の自治体の首長と大学等で人材育成ビジョンを検討するスキームを構築し、地域の産業政策と教育政策を連動させつつ、大学が地域振興の担い手を育成・輩出することが求められる。加えて、大学は20歳前後を想定した従来の「学生像」から脱皮し、リカレント教育の充実により、社会人の学びの場としての機能を強化していくことや、高等専門学校と企業との連携・協働により産業人材を育成していくことなども重要である。

三つ目は、あらゆる世代が学び続ける「全世代型教育システム」の構築である。今後、官民一体でリスキリングのギアを上げ、労働生産性を向上していくことが求められる。そのためには、学歴社会から学修歴社会へのマインドチェンジが不可欠であり、社会全体で機運を醸成したい。経済成長に必要なスキルの需要予測を政府が可視化し、リスキリングに取り組む学修者が将来的なリターンを予見できるようにすることで、成長分野への円滑な労働移動等を実現する。また、大学等は学修成果の可視化をさらに進めるとともに、企業は学修歴を評価する採用・雇用体系への転換を図っていく必要がある。

四つ目は、グローバル人材の育成である。日本人は英語能力が世界的に低く、また、学生数に対して長期海外留学者数が少ない状況である。そのため、政府による奨学事業の大幅拡充を通じた日本人の海外留学の促進や、初等中等教育における生成AI等を活用した英語教育の推進、価値創造に貢献する優秀な外国人材の戦略的誘致と定着に向けた環境整備等が重要である。

教育投資は未来への投資である。そのため、教育への公財政支出を強化するとともに、効果的な教育投資を行うことが重要である。

【教育・自然保護本部】

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