
シュタイナー氏(中央)、西澤副議長(左)、中山委員長(右)
経団連の西澤敬二審議員会副議長/企業行動・SDGs委員長、中山讓治同委員長らは12月16日、東京・大手町の経団連会館で、国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁と懇談した。シュタイナー氏の発言概要は次のとおり。
■ UNDPの取り組み
地政学・地経学的な混乱、高インフレ・債務が世界市場に影響を及ぼし、また、気候変動が深刻化するなか、われわれは急速な変革を迫られている。
UNDPは、エネルギートランジションや脱炭素化に向けて取り組んでいる。例えば、金融・保険セクターとも協力し、世界の貧しい人々のために気候変動に関する保険制度の構築や規制改革を進めている。また、グリーンボンドやブルーボンド等のさまざまな債券発行に関する支援を通じて、この3年間で10カ国が300億ドル以上の資金を集めることができた。
デジタルやAIといったさまざまな技術は、世界中に最も重要な変化をもたらす。通常、新しい技術がアフリカなどの発展途上国に届くまでには10~20年かかるが、デジタル技術は大変な勢いで広がる。フィンテックの分野では、革新的な技術がアフリカ大陸から生まれてさえいる。デジタルヘルスも非常に進んでおり、スタートアップや起業家に大きなチャンスをもたらしている。
このようにUNDPが常に発展途上国に焦点を当てるなか、輸出国である日本の将来の成長市場も発展途上国にある。日本が発展途上国と共に、規制やイノベーションの枠組みを進化させ、イノベーションを創出していくことが重要である。
■ 求められる投資の拡大
SDGs達成に向けて、ファイナンスの規模が拡大していないことが大きな課題である。例えば、2023年の世界の軍事費は2兆4000億ドル規模であったのに対し、開発への投資は2000億ドルのみであった。世界のエネルギーに対する投資は24年に3兆ドルを超える見通しであるが、そのうちアフリカ向けはわずか2%である。現在電気を利用できないアフリカの6億人に電気を提供して、開発の軌道に乗せていく必要がある。そこで、官民両方からの投資が求められており、ブレンデッドファイナンス(注)が非常に重要になってくる。UNDPはブレンデッドファイナンスのためのプラットフォームとして、国連資本開発基金(UNCDF)を設置している。
UNDPはグローバルな視点を提供するが、全ての問題に対する答えを持っているわけではなく、金融や保険、技術の視点を持つパートナーを必要としている。しかし、脱炭素化にしても、金融セクターやエネルギーセクターの多くが様子見している。UNDPは、政府に対する規制策定の提言や社会実験のプラットフォームの提供を通じて、新しい市場や技術のフロンティアにおけるリスクを軽減していく。産業界の皆さまには、さらに積極的に投資を拡大してもらいたい。
(注)公的資金と民間資金を効果的に組み合わせた金融手法
【ソーシャル・コミュニケーション本部】