21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は12月17日、経済安全保障やセキュリティクリアランスの基礎的な内容を周知するとともに、企業の意識変革を促す観点から、シンポジウム「企業が直面するリスクとチャンス~変化し続ける経済安全保障環境を踏まえて」をオンラインで開催した。同シンポジウムは、2024年4月に新たに立ち上げた研究プロジェクト「経済安全保障と知財」(研究主幹=渡部俊也東京大学未来ビジョン研究センター教授)に基づく成果報告の一環として、6人の研究委員によるプレゼンテーションとディスカッションを行った。概要は次のとおり。
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■ プレゼンテーション
冒頭、渡部研究主幹は、同研究プロジェクトの意義と位置付けに関し、経済安全保障の定義や政策背景、外国に遅れ日本でも24年に法制化されたセキュリティクリアランス制度の基本的な内容、これらがもたらす企業への影響――について、リスクとチャンスを踏まえた形で説明した。
峯村健司研究委員(キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)は、諸外国がいかにして日本企業の技術をねらっているか説明。諸外国の活動根拠となっている経済安全保障の考え方が日本や欧米とは異なること、これに対処するため企業内での経済インテリジェンスが重要であることなどについて言及した。
上野一英研究委員(TMI総合法律事務所パートナー弁護士)は、経済安全保障に関わるさまざまな法律・政策について、半導体産業を取り上げて説明。企業が取り組むべき具体的な措置や考え方として、自社の重要技術を認識し、守るための措置を講じ、対応内容を必要な範囲で開示することで、リスクをバリューに転換することなどを語った。
■ ディスカッション
プレゼンテーションの後、長澤健一研究副主幹(キヤノン顧問)、吉岡(小林)徹研究委員(一橋大学イノベーション研究センター准教授)、森達也研究委員(三菱重工業知的財産部マネージングエキスパート)を加えた6人によるディスカッションと質疑応答を行った。
自社の重要技術認識の難しさや情報漏洩対策など、参加者からの質問に対し、企業内での組織を超えた取り組みについて具体例などが示された。
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開催後のアンケートで、所期の目的について一定の理解が得られたことを確認した。今回の内容は今春発刊予定の21世紀政策研究所新書にて詳述する。
21世紀政策研究所では、注目課題である経済安全保障について、さまざまな視点からの考察が必要なことから、同研究プロジェクトを中心に、他の研究プロジェクトとの連携等も図りながら多面的な活動、報告を行う予定である。
【21世紀政策研究所】