
スヴィリデンコ第1副首相(左)と國分部会長
経団連のウクライナ部会(國分文也部会長)は12月16日、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略による延期を経て、5年ぶりとなる第9回日本ウクライナ経済合同会議を東京・大手町の経団連会館で開催した。同会議では、國分部会長(ウクライナ経済復興特別委員長)とウクライナのユリア・スヴィリデンコ第1副首相兼経済大臣が共同議長を務め、古賀友一郎経済産業副大臣、藤井比早之外務副大臣を来賓に迎え、両国の関係者総勢約200人が参加した。EU加盟に向けたウクライナの構造改革や、緊急ニーズへの対応と中長期の持続可能な成長のためのインフラ整備・産業復興を巡り、活発に議論した。概要は次のとおり。
■ 開会セッション
冒頭、國分部会長は、ロシアの侵略が長期化するなか、日本のウクライナ支援への姿勢が全く揺らいでおらず、経済界も政府と緊密に連携して復興支援に取り組んできたと述べた。そのうえで、緊急的なニーズに的確に対応するとともに、復興プロジェクトをバンカブル(融資可能)なものとするためのスキームの組成・提示が必要であると指摘した。
続いて、スヴィリデンコ第1副首相は、日本の支援に感謝を表明するとともに、規制緩和や汚職防止等の国内改革を進めていると説明した。特に、エネルギーインフラの復旧や、農業・食品、IT・デジタル化といった成長分野への投資と技術移転が必要であるとし、日本の協力に期待を示した。
古賀副大臣は、経産省として、福島復興等の災害復興の知見を生かした日本ならではの貢献を継続し、ウクライナでのビジネス創成を目指した実証事業支援に取り組むとともに、中東欧等の周辺国との連携や2024年10月に開所した日本貿易振興機構(ジェトロ)キーウ事務所を通じて、さらなる民間投資の促進を支援していくと述べた。また、ウクライナによる2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)への参加表明に謝意を述べ、万博を通じたウクライナ経済の活性化に対する期待を示した。
藤井副大臣は、ウクライナによる汚職対策、司法改革、国有企業改革等の国内改革の取り組みを評価したうえで、日本政府としてもG7等の関係者と連携して協力を進めると述べた。さらに、外務省として、政府開発援助(ODA)による官民連携事業等の施策や円借款の供与等により、ウクライナの復興につながる日本企業の活動を後押しする旨、表明した。
■ パネルディスカッション
第1セッションでは、ウクライナの経済状況やビジネス環境、EU加盟交渉の進展状況、復興計画の現状が共有され、復興のための金融支援の枠組みについても議論が行われた。
第2セッションでは、地雷探知・除去や電力復旧、ヘルスケアなど、戦時下の緊急ニーズへの対応について説明があった。日本の大企業とスタートアップ企業が、それぞれの強みを生かして迅速かつ柔軟に対応している事例が紹介された。
第3セッションでは、中長期的な復興支援に焦点を当て、通信や橋梁などのインフラ整備や、ウクライナの主要産業である農業・食品分野における日本企業の取り組みが共有された。
各セッションを通じて、ウクライナの復興を実現するための企業の役割や支援策等について活発な意見交換が行われた。
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同会議では、経団連とウクライナ経済省の間でメモランダムが締結され、ハイレベル対話の重要性を認識し、今後も継続していくこと等について合意した。経団連は、同会議の成果も踏まえて、引き続き、両国の経済関係の強化を推進し、ウクライナの経済復興に取り組んでいく。
【国際経済本部】