経団連は4月16日、「グローバルサウスとの連携強化に関する提言」を公表した。2024年春に政府がグローバルサウス諸国との連携に向けた方針を取りまとめることを念頭に、現下の国際情勢と日本の課題を踏まえ、グローバルサウスとの連携強化の必要性と留意点に言及しつつ、各種の施策等を要望している。概要は次のとおり。
■ 現下の国際情勢とわが国の課題
世界は対立と分断の色を濃くしており、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は危機にさらされている。また、地球温暖化や人権抑圧、格差の拡大等、地球規模の社会課題が深刻化しており、グローバルサウスの視点に立った真に包摂的かつ継続的なアプローチが求められている。そうしたなか、世界のパワーバランスがグローバルサウスへとシフトしている。
他方、国内市場が縮小する日本は、グローバルサウスをはじめとする海外の活力を取り込むことが不可欠である。また、日本が依拠する自由で開かれた国際経済秩序の再構築に真摯に取り組むことが必要である。グローバルサウスが直面する社会課題の解決に、課題先進国としての経験・知見を生かすことで、わが国が国際社会、特にグローバルサウスから「必要な国」として選ばれることが重要である。
■ グローバルサウスとの連携強化の必要性と留意点
こうしたなか、わが国は、(1)国益の確保(2)国際秩序の維持・強化(3)社会課題の解決――の観点から、グローバルサウスとの連携を強化する必要がある。
もっとも、グローバルサウスは国・地域によって状況が異なる。そのため日本は、連携を強化するに当たり、主要国・地域別に方針を策定することが求められる。また、相手国・地域の戦略の策定段階から官民が連携して関与し、「オファー型の協力」を行っていくこと、具体的なプロジェクトの推進に際しては相手国のみならず、近隣国や地域といった線や面を意識することが肝要である。さらに、パートナーとして対等な目線で連携を進めることや、民主主義などの価値の共有は必ずしも求めず、国益確保等の視点から広く連携することが重要である。その際、諸外国は日本を上回るスピードでグローバルサウスとの連携を強化していることにも留意すべきである。
■ 連携強化に向けた具体的な施策、主要国・地域別の方針
今後、グローバルサウスとの連携強化に際し、対象国・地域の実情に合わせ、政策ツールを有機的に組み合わせるべきである。具体的な政策ツールとしては、(1)内閣総理大臣等のトップ外交(2)官民フォーラムの開催(3)質の高いインフラシステムの展開(4)経済協定の締結等(5)国際ルール・国際標準の形成(6)第三国との協力(7)ファイナンスの拡充(8)スタートアップの振興(9)プロジェクトの継続的支援(10)法整備等の支援(11)人材の交流――を挙げている。例えば(6)については、欧州、トルコ、インドの企業とアフリカ市場の開拓を行うことなどが考えられる。また(7)では、国際協力機構(JICA)によるODAや、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)等による出融資機能の拡充、ODA対象国や卒業国における施設・設備の実装に向けた公的な施策の導入を提案している。
主要国・地域別の方針策定では、アジア、中南米、アフリカ、中東、中央アジアを取り上げている。例えば、インドについては、日米豪印(QUAD)やインド太平洋経済枠組み(IPEF)を通じた協力推進、EPAの改訂、租税条約の改正、二国間クレジット制度(JCM)の締結などを盛り込むことが重要である。日本政府には、時間軸を決め、他国の状況を注視しながら責任を持って主要国・地域別の方針を策定・実行することを期待する。
【国際協力本部】