経団連は3月13日、東京・大手町の経団連会館でバイオエコノミー委員会企画部会(大内香部会長)を開催した。来日中の英国科学・イノベーション・技術省(DSIT)のアーロン・ペイン氏(International engagement lead for engineering biology=国際連携責任者)、スタートアップのポール・ビーストール氏(Hutan Bio代表取締役、Evonetix社外取締役、Medicines Discovery Catapult社外取締役)をはじめ、主要大学教授らで構成される英国訪問団から、バイオに関して英国の抱える状況や課題、目線について説明を聴いた。あわせて、経団連からバイオエコノミー委員会の活動、日本のバイオテクノロジー市場や強みについて説明し、意見交換した。英国側の説明概要は次のとおり。
■ 英国の現状
英国では、合成生物学における研究を基に、生産規模の拡大、商業化までのプロセスを一貫して表す用語として「エンジニアリング・バイオロジー」を掲げている。遺伝子工学技術に関連するコストは近年大幅に低下しているため、成長と商業化の機会は拡大している。
英国におけるエンジニアリング・バイオロジーは、「農業・食料」「ヘルスケア」「化学・材料」「低炭素燃料」「廃棄物・環境」の五つの分野に分類される。各技術は大学の基礎研究に基づいており、それぞれの分野で企業が商業化を目指している。
英国は、他国との活発な協力によって成功を収めてきている。ベンチャーキャピタルからの投資額は世界3位であり、バイオに関するスタートアップの数は欧州内で最多である。直近5年間では、エンジニアリング・バイオロジーに携わる企業は52億ポンドを集めている。そのほとんどがヘルスケアに関連する分野の企業であり、専門知識・知見を有する大学や研究機関を中心に、英国全土に幅広く分布している。
■ 英国政府のエンジニアリング・バイオロジーへの展望
英国政府は、バイオ分野に今後10年間で20億ポンドを投じる見込みである。特に重視しているのは、(1)世界最先端の研究開発(2)適切なスタートアップの成長に資するインフラの整備(3)人材、スキルの育成(4)規制と技術の商業化のための環境整備(5)経済への取り込み(6)英国のエコシステムおよび国際競争力を維持しつつ、責任を持って技術開発をなし得るような法律やガイドライン・標準の整備――の六つである。
直近では、アカデミア、スタートアップ、産業界と共にエンジニアリング・バイオロジーに関する新たな運営グループを組成したうえで、戦略的な提言を行うことを目指している。また、英国におけるスタートアップの規模拡大のために新たな企画や計画を実行していく。
■ エンジニアリング・バイオロジーの課題と見通し
英国でエンジニアリング・バイオロジーに関するスタートアップに携わる経験から、スケールアップは難しいと感じている。資本の獲得や必要な設備の確保のほか、強みのある研究領域をいかに産業へと進展させるかという課題があるからである。解決するには、政府からの支援が必要不可欠である。また、この分野での日本と英国の緊密な協力が望ましい。英国のバイオテクノロジーへの日本の投資に期待している。
【産業技術本部】