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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2024年4月11日 No.3633 ロシア・中央アジアの政治・経済の現状と予測に関するセミナーを開催 -日本ロシア経済委員会

ザスラフスキー氏

経団連の日本ロシア経済委員会(國分文也委員長)は3月11日、東京・大手町の経団連会館で米国のコンサルティング会社であるホライズンエンゲージ社のアレクサンダー・ザスラフスキー共同創業者兼マネージングパートナーから、制裁下のロシア情勢および周辺国との関係などについて説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 対ロシア制裁の効果

ウクライナ侵攻当初から行われた各国による対ロシア経済制裁によって、ロシア経済は深刻なダメージを受けると多くの西側の専門家が予想していた。しかし、侵攻開始から2年が経過した今、ロシア経済は機能不全に陥るどころか、成長している。ロシアの財政は、石油・ガス収入ならびに非石油・ガス収入が驚くほど伸びており、名目ルーブルベースではあるものの10年前と比較して2倍以上の成長を遂げた。

収入の伸びに比例し、軍事費も拡大している。経済制裁の目的がウクライナ戦争における軍事費を奪うことであったとすれば、現時点ではうまく機能していないことが露呈した。2024年度のロシアの軍事費はGDPの8%以上を占めるまでになっている。

■ 侵攻開始以降のロシアと中国の関係

ロシアの中国との貿易額は過去4年間で2倍以上になった。特に、中国車・プラスチック製品・化学品など、軍事調達につながるデュアルユースの分野における中国からの輸出が飛躍的に伸びている。また、両国の貿易の約40%が中国通貨建てで行われていることからも、ロシアの中国依存の高まりが見て取れる。

しかしながら、中国は米国からの二次的な制裁に注意を払っており、ロシアとの関係には慎重であるという見方もできる。

■ 対ロシア制裁の抜け穴

今回の対ロシア制裁には多くの抜け穴があったため、その効果は十分に発揮されなかった。特に、石油については、ギリシャ企業がロシアにタンカーを売り、シャドータンカー(影の船団)として海上輸送を行うことで、欧米の制裁を逃れている。

また、近年EUから中央アジア周辺地域への輸出が急増した。もちろんこの貿易は、関税同盟を結ぶロシアに流れている。

今回の制裁をみるに、豊富な天然資源の産出国であり、国境を接する複数の国と関税同盟を結ぶロシアを経済的に孤立させることは非常に難しいことを実感する。しかしながら、これらの現実を受け止めたうえでロシア経済に真にダメージを与える制裁、体制を考案しなければならない。

■ カザフスタンの政治・経済情勢

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は、ヌルスルタン・ナザルバエフ政権時の官僚主導から脱却を図り、若手の実力者を次々と重用している。鉱業分野への外国投資を歓迎する一方、ロシアへの過度な依存は避けたいとの考えから、日本をはじめとするG7諸国からの投資に特に期待している。

ただし、政治の不安定化や労働運動の高まりなどのリスクにも目を向ける必要がある。外国投資家は、カザフスタンの投資環境や政治情勢に起因するリスクを慎重に見極めなければならない。

【国際経済本部】

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